> スネ雷小説アーセナル以降改変3

■ Re-Birth (3) ■

 

 

 

 幸い一度も敵に見つかることなく、長期保存用の食料庫に着いた。出入り口から一番遠い死角に一旦雷電を降ろし、高く積まれたカーボン製の箱を次々に移動させて小部屋を作る。元々どういう風に荷物が積まれていたかを知っている人間でなければ、中に空間があるとは気付かないはずだ。

 一仕事終えて、俺は雷電を小部屋に運ぶために両腕で抱き上げた。流石にキリリと、傷口が痛む。俺の小さな呻きに気付いて、雷電が心配そうに見上げてきた。透き通るような水晶色の瞳。

「アンタ、そんなに動いて……傷は、大丈夫なのか?」

「大した傷じゃない───」

 お前に比べれば、という言葉をグッと飲み込み、俺は雷電を小部屋の床に寝かせた。アーセナルの中はG.W.のAI保護のためかRAYのためか、どの部屋も室温が低い。俺はずっと身体を動かしていたからまだ堪えるほどではないが、雷電は身を縮める事さえ出来ずに震えている。ジャケットを脱ぎ、横たわったままの身体に掛けてやった。

 それから箱を積み上げる時に見つけたヒートパックで、ミネラルウォーターを温める。人肌より少し熱くなったのを見計らって、砂糖と塩とクエン酸を入れ、とりあえず手製の経口補水塩を作った。まずは水分と塩分の補給だ。食料庫というのは、正解だったかもしれない。体力の回復に使えそうなものに、事欠かないで済む。

「飲めるか?」

 ペットボトルを差し出してから、俺は奴の身体が自由に動かないことを思い出した。上半身を抱えるようにして、ボトルの飲み口を唇に含ませる。

「生ぬるいから美味いとは言えんだろうが、我慢しろ。ここは冷えるからな」

 少しずつ傾けて、何口か毎に自分も喉を潤しながら、時間を掛けて飲ませた。通常、任務中はせいぜい喉を湿らせる程度で、出来るだけ水分を取らないようにするものだが、今はそんなことを言っていられない。

 そうする内に完全に湯が沸いたので、今度はカロリー補給と冷えた身体を温めるために、ホットココアを作って飲ませる。

 水分を補給したせいか、雷電の発汗が酷くなった。発汗自体は、薬物を抜くためには悪いことではないのだが。寒さに震えているのに、一目で判るほど布地に汗が滲んでいる。このままでは余計に冷えてしまう。もう一着くらい余分に剥ぎ取ってくれば良かったのだが、今更仕方が無い。まずは汗を拭いて、俺の着ているものと交換してやるしかない。

 どうせ汗を拭くなら、身体中にこびりついた精液も綺麗に拭いてやろう。せめてシャワー代わりにと残っている湯にキッチンペーパーを浸し、一旦服を脱がせて全身を拭き取ってやろうとして、勃ちあがったままのそこをまだ処理してやっていないことに気付いた。汗と震えの原因は、これもあるのかもしれない。

「……とりあえず、着る前に一回、抜いとくか」

 手早く全身を拭き取った後で雷電が気にかけないよう、冗談めかしてそっと手を伸ばすと、動けない筈の白い体が、大きくビクリと竦んだ。

「…嫌! 嫌だ、やめてくれ、スネーク!!」

「だが、このままじゃ休むに───」

 休めないだろう、と言いかけて、雷電の震えが異常なほど大きくなっているのに気付いた。そこに浮かんでいる表情は羞恥ではなく、紛れもなく恐怖だ。

「─────何があった?」

 唇を噛んできつく目を瞑ると、雷電は押し出すように言葉を紡いだ。

「…………ソリダスの言った通りだ。俺は───『そこ』ではイケない………」

「!? バカな───」

「……『後ろ』だけでイクように、調教されたんだ、子供の頃───出来れば褒められた。チョコレートをひとつ貰えた。でも、『そこ』への刺激でイッたりしたら────酷い『お仕置き』が待っていた……」

「『お仕置き』?」

「……クリップをたくさん付けられて、それを鞭で全部叩き落されたり、ハリネズミみたいになるまで一杯、針を突き刺されたり……毒蜘蛛を詰めた瓶の中に、無理やり入れさせられたりして───凄く、怖かった……!」

「雷電───」

 その時の恐怖を思い出したのだろう、雷電の震えが、一層大きくなった。

「…っだから俺は必死だった! 必死に我慢して、必死に『後ろ』で快感を探して……! ────気が付いたら、奴の望むような身体になってた……男に犯されて悦ぶ、いや、犯されないとイケない身体に…っ…!」

 一気にそこまで話して、雷電はまた唇を噛んで黙り込み、音もなくはらはらと涙を流した。───成程、心的外傷(トラウマ)による射精障害の一種ということか。そんな目に遭ってきたのならば、無理もない。

 抱きしめる腕に力を込める。無理やりに、闘うことと、男に快楽を与えることだけを求められてきた、哀しい、愛しい命───。

「─────お前が、俺に惚れてるというのは、本当か?」

 雷電はハッと目を見開いてしばらく考え込んだ後、瞳を閉じてゆっくりと頷いた。

「……すまない。気持ち悪いだろう? でも、いつも───何でアンタじゃないんだろうって……アンタだったら良いのにって、思ってた……」

「そうか。なら────」

 俺はゆっくりと、雷電の少し薄く、紅い唇に自分の唇を重ねた。怖がらせないように、そっと触れるだけの優しいキス。

「……っ!?」

 透き通るような水色の瞳が、驚愕の色を浮かべている。そこに嫌悪が無いのを見て取って、俺は言葉を続けた。

「────俺と、セックスしよう。俺がお前の『初めての男』だ」

「何、言って……俺はガキの頃から散々…っ……」

 激昂する頬に宥めるように口付け、耳元で囁く。さっきまで自分でも、考えもしなかったが───今でははっきりと、こいつを抱きたいと思う。

「お前が受けてきたのは、暴力だ。セックスじゃない。セックスってのは好意を持つもの同士が与え合い、求め合うものだ。一方的に奪うのは、只の卑劣な暴力に過ぎない」

「…………」

 伏せられた睫が、潤んでゆらゆらと揺れた。俺の真意を、図りかねているのかも知れない。だが、拒絶してはいない。

「───だから、お前はセックスなんて、したことはない。何も知らない、初心な子供のままだ」

「……そんなの、屁理屈だ……」

 呟いて見上げて来る、濡れた瞳。その瞼にもそっとキスをしてから、俺は雷電の少し薄いが赤く柔らかな唇に、今度は深く口付けた。舌を絡めると、おずおずと応えてくる。

「屁理屈だって、理屈のうちだ───」

 

 

 

 スネークが俺の右手を掴んで、掌に口付ける。ゆるゆると指と指とを絡ませながら、舌を滑らせる。掌から手首へ、肘の内側を通って胸元へ。俺が身を震わせた箇所には唇を押し付けて緩く吸い、小さな水音を立てて。

 赤と紫色の筋の付いた乳首が、そっと彼の唇に含まれた。熱い舌でゆっくりと転がされ、やわらかく吸い上げられる。

「……っ、あぁ…っ…!」

 今まで感じたことのない背筋が蕩けるような感覚に、堪えきれずに声が漏れた。

「すまん、痛かったか?」

「ちが…っ……そんなに、優しくしないでくれ……」

 乳首なんて、噛まれるか抓られるか引っ張られるか…針を通されるかが、いつもの事で───優しすぎる愛撫に溺れてしまいそうで、怖かった。

「そんな風にされたら、俺………」

 きっと彼は薬を早く抜くために、抱いてくれているだけなのに。少しでも愛されているのではないかと、勘違いしてしまう。

「……早く突っ込んでくれ。そうしてくれれば俺は、勝手にイケるから───」

「───駄目だ。俺は、そういうのは好きじゃない」

「え…?」

 愛撫まではともかく、男に挿入なんて、出来ないということだろうか? 驚いて見上げた俺の頬に、スネークはまた、キスをした。

「───『セックスする』と言っただろう? 一緒に気持ち良くならないと、意味がない」

 そうして今度は反対側の乳首を唇に包まれる。そこはもう期待に硬く立ち上がっていて、さっきよりも更に強い性感に、全身が震えた。

 舌が少しずつ下りて臍の周りを擽り、腰骨へ、内腿へと這わされる。鼠頚部から膝の裏に繋がる筋を、優しく噛みしだかれる。脹脛に頬擦りしながら、小さな音を立てて吸い上げ、足首へ。

「…あ……あ…ぅ……ぅあ……ぁ……」

 爪先まで来るとスネークは、俺の足の指をじっとりと咥えた。熱い口腔に含まれ、指の間まで舌先で擦られる。

「……っ……そんな、とこ……汚、い……あぁ…っ……」

 身ぐるみ剥がされてから俺はずっと裸足だったし、さっき一度拭いてもらったとはいえ、汗や埃で汚れているに違いない。それを、口に入れるなんて。

 信じられない、と思いながらも、ゾクゾクと背筋を快感が走る。そんな所に性感帯があるなんて、少しも知らなかった。

「いや。綺麗な指だ」

 スネークはそう言って今度は、反対側の指にむしゃぶりついた。手足の動かせない俺は、ただ腰をくねらせて喘ぐしかない。一頻り俺に声を上げさせると、愛撫はゆっくりと爪先から脇腹を通って、上の方へと戻ってくる。

 脇の下まで辿り着くと、彼はそこを頬張るようにして丹念に舐った。

「やっ、あ……!」

 そんな所をそんな風にされるのは初めてで、ビリリと走った快感に、焦ったような声が出てしまう。

「嫌か? ここ…」

「…嫌、じゃない、けど───」

「いい匂いだったんで、つい、な」

 いい匂い? 人形みたいに体臭がしない、と言われたことなら何度もあるが。

「…俺、何か匂うか?」

「? 誰でも匂いはあるだろう? お前は美味くて柔らかそうな、優しい匂いがしてる。柑橘の花みたいな匂いだ」

 なら、スネークはどんな匂いがするんだろう? 一瞬ソリダスの、饐えた雄の臭いを思い出して、気分が悪くなる。やっぱり顔や声と同じで、ニオイも似ているのだろうか?

 確かめてみたい─────。

 

 

 

 暫くして俺は、スネークの愛撫に反応して自分の手足が僅かに動いているのに気が付いた。まるで下腹部に全身の熱が篭っているような催淫剤の効果はまだ残っているが、手足の弛緩は少し取れてきたようだ。

 ひょっとしたら彼の愛撫は、リンパ節のマッサージを兼ねているのかも知れない。スネークに触れられた部分から、急速に機能が回復し始めた気がする。

 俺が動ける、となったら、スネークはどうするだろう? 本当なら、こんな事をしている時間なんてない筈だ。

 それでも彼の愛撫は心地よく、体調が戻ってきたことを告げるのを躊躇してしまう。俺は運動能力を取り戻し始めた手足をスネークに気付かれないように、出来るだけ動かさないよう努めた。

 ────もう少し。もう少しだけ、彼の熱を感じていたい。もう少しだけ。

「…っあ、やぁ…っ!」

 しかし暖かい掌にそっと欲棒を包まれて、思わず腕を動かし、彼の手首を押さえてしまった。そこへの刺激は俺にとってはまだ、恐怖の対象でしかない。

「すまん。ここはまだ『おあずけ』だったな。───動けるようになってきたのか?」

 彼が『おあずけ』と言った意味はわからないが、動けるようになってきたのは確かだ。仕方なく頷くと、彼の顔に少し、安堵の表情が浮かんだ。それから愛撫の手を再び、滑らせ始める。

「なら俺の髪を撫でるなり、背中に手を回すなり、したいようにしてろ」

「だが……こんな事してる場合じゃ───」

「───そうだな。だが今は、お前の方が大事だ」

 口篭った唇をまた深く激しく貪られて、理性が押し流されていく。再開された刺激に、身体だけでなく心も、悦びに震えた。

 

 

 

「…っ…スネーク…頼みが……」

 早く入れて欲しい。腰の奥が疼いて、もう堪らなかった。けれどその前にどうしても、確かめておきたいことがあった────スネークとソリダスが、違うということ。

「何だ?」

「───その……口でしても…良いか?」

 まだ走り回ったりするのは難しいだろうが、四つん這いで這うくらいなら出来る。口だって───使える。

「それは構わんが───良いのか?」

「……アイツとは違うって、確認したい」

 一瞬躊躇したようだったが、スネークは床に腰を下ろして俺の上半身をそっと引き寄せた。目の前で、逞しく屹立した彼自身。当然なのだろうが、大きさや形はソリダスのものと酷似している。だが、何かが決定的に違う、と感じた。

「……似てる、けど────やっぱり、違う……」

 ホッとして安堵の笑みを浮かべるのに、スネークが居心地悪そうに少し後ずさる。

「あんまりジロジロ見るな……何が違うんだ?」

「雰囲気というか……匂い────?」

 匂いの記憶は一番、プリミティブで情動的なものだと聞いたことがある。だからこそ、一番強力に記憶に作用すると。

 俺にとってソリダスの匂いは、見えないのに確かにそこにいてこちらを狙っている、暗闇の中の爬虫類のニオイだった。

 だがスネークの匂いは、汗と煙草の染み付いたシーツに明るい陽射しが当たっている感じがする。温まった岩の上でゆっくりと日光浴をする、干した煙草色の蛇のイメージが浮かんだ。

 ────機械みたいに、記憶を上書き出来たらいいのに。

 スネークの匂いで、奴に関係するすべての記憶を消してしまいたいと思った。

 そっと両手の指で包み込んで、先端にちろりと舌を伸ばす。口を開けるとますます匂いの違いがはっきり判って、俺は迷わずそれに舌を這わせた。

 大きいのをそのまま頬張ると、滑りが悪くて頬や唇が痛くなる。まず緩く開いた唇を押し付けてやわやわと揉み解しつつ、舌先をチロチロと這わせた。時折吸い上げたり頬擦りしたりしながら、全体に唾液をまぶす。

「…ん…ぅ…ん…ん…っ…」

 亀頭だけを口に含んでゆるく吸い上げ、鈴口の溝と鰓の下を交互に舌先で擦る。それから少し窄めた唇で雁首をしごくように浅くピストンを繰り返した。

 少しずつ、少しずつ深く、喉の方まで迎え入れていく。そうするともう舌も殆ど動かせないので、ゆるゆると舌全体を裏筋に擦りつけながら、唇で根元まで刺激する。膨らみ始めた睾丸も、リズムをつけて指先でそっと、揉みたてた。

「……ぅ……ぉ……っ……」

 スネークの小さな呻き声が、硬い叢のゴワゴワした感触と汗の香りが、俺を夢中にさせた。身体全体を前後に揺らして、唇と口腔と喉を使い、先端から根元まで余すところなくしごき立てる。口蓋を擦る浮き出た血管が脈打つのさえ、快い。時折すこし抜き出して息を継ぎながら、俺はその匂いと感触に没頭した。美味しいとさえ思った。

 段々と更に量感が増して流石に息苦しさも限界になってきたので、嘔吐いてしまわないようにゆっくりと抜き出す。唇から喉までを満たしていたものが無くなっていくのを何だか名残惜しいと思いながら、俺は目を閉じて乱れた息を整えた。

「……また涙が出てるぞ。無理するな」

 頬をぬぐわれ、そのままそっと上体を引き上げられて、優しく口付けられる。

「───だが、気持ち良かった。ありがとうな」

「え…?」

 ありがとう? 俺は男根に奉仕したばかりの唇にキスされた事よりも、スネークの言葉に驚いた。こんな状況でそんな事を言われたのは初めてだ。それに彼が強制したわけでも、依頼したわけでもない、俺が勝手にやったのだ。息苦しかったのは事実だが、無理に押し込まれるのではなく自分のペースでやれたから、そんなに辛いとは感じなかった。

「何だ、妙な顔して」

「……だってアンタ、『ありがとう』…って───」

「? 俺を気持ち良くするために、苦しいのにやってくれたんだろうが。だったら普通、『ありがとう』だろう?」

 今度はスネークの方が不思議そうな顔をしながら、四つん這いになった俺の背後に回る。指先で優しく乳首を転がしながら、今度は背中に、唇と舌が下りてくる。口付けるうち、肩甲骨の左右対称の刺青が目に留まったらしい。

「これ───どうしたんだ?」

 自分の身体のあちこちに刻まれた、無機質な刺青。何かの刻印なのだろうが、いつ、何のために入れられたのかも、俺は覚えていなかった。

「───ん、…ぁ…判ら、ない……」

「そうか……何だか、天使の羽根の痕みたいだな……」

 そう言いながらチュ、チュと音を立ててそこここを吸い上げ、舌が背筋を這い下りていく。温かい掌が脇腹を擦り腰骨をなぞって、尻肉を揉み立て始める。早く犯して欲しくて疼いている場所に、間接的に伝わるもどかしい刺激。

「…ん…ふ…っ…ぅ、ぁ…っ……」

 スネークが両の親指で、双丘をグッと押し開く。既にそこがヒクヒクと喘いでいるのが、自分でも判った。

「…っあ! やめ…っ…!」

 彼は開いた唇を押し当てたまま、そこを舌で舐めまわした。喘いで力の抜けた瞬間に合わせて、熱くぬめる舌先が少しずつ入り込んでくる。どれだけ男達のモノを咥えさせられたかも判らない位に、汚れているというのに。俺は申し訳なくて、消え入りたいような気持ちになった。

 だが、悦びが大きいのも、事実だった。スネークは先程よりも更に優しく、丹念に舌できつい肉を抉じ開けていく。肉柱で中を突き上げられる時とは全く別の甘い快美感に、全身が包まれた。

「…あ…あ…あぁ……ぁ、あ…っ……」

 柔らかな軟体動物のような舌に、一番狭い、敏感な粘膜をザラついた表面で擦りながら出し入れされる。そこから身体中の肉が蕩けていくような気がした。

 陶然と快感に酔っていると、ぬるりと冷たいものが塗りつけられる。

「…っ、…何…?」

「オリーブオイルだ。何も無いよりはマシだろう」

「そんなの……」

 どうせ散々犯られた後なのに、とは思ったが、言えなかった。

 節くれ立った指がやわやわとそこを揉み立て、やがて埋まり込むように指先が這入り始める。スネークはまるで何かを探るように、指と舌とでゆっくりと小さな放射状の窄まりを開いていく。温かい唾液と冷たいオイルが、交互に俺の中に垂れ落ちてくる。

 指が三本も入るようになった頃には俺はもう半分朦朧としていて、ただただ早く彼が俺の中に埒をあけてくれることを願っていた。

「───傷はなさそうだが、少し腫れてる。摩擦は少ない方が良いな」

 そう言うと彼は自分のモノにも滴るほどに塗りつけ、何度か扱いて、筋立った血管の隆起にまでしっかりと馴染ませた。オイル塗れで不規則な収縮を繰り返している蜜口にそれをあてがうと、耳元でそっと囁く。

「────良いか?」

「…ん……」

 期待に震えながら頷くと、ようやく待ち望んでいた熱く逞しいものが、確かめるかのようにゆっくり、俺の中へと入って来た。狭い肉の輪を馴染ませるように少しずつ押し拡げ、一旦抜き出しては、もう少し深く。

「…あ…あ…あぁ…あ、ぅ…ぅ、くうぅう…っ!」

 薬のせいか焦らされたせいか、まだ半ばまでも咥え込んでいないのに達しそうになってしまう。イク瞬間が一番良く締まって具合が好いからと、ソリダスの射精に合わせるように躾られていた俺は、反射的に放出を堪えた。スネークが少し辛そうな顔をして、俺の髪を撫でる。

「我慢なんかしなくて良い。お前は───色んな事を散々、我慢して来たんだろ?」

「ス、ネーク……」

 振り向いて彼を見つめた俺の頬に、こめかみに、触れるだけの口付けを落としながら彼は緩やかに、けれど力強く、打ち込みを繰り返した。

「あ…ん…ん…ん…っ…ん、ぁああぁ…っ…!」

 彼のモノを根元まで受け入れただけで、俺は遂に、欲情を迸らせてしまっていた。今までの絶頂の時に見えていた赤と黒の明滅ではない、明るい虹色の光が一瞬、瞼の裏に閃く。

 押し開かれて薄く敏感になったそこの皮膚に、ザリザリと擦れるスネークの叢の硬さが堪らない───。そう感じた途端、出したばかりだというのに、俺の肉茎は又ヒクヒクと痙攣して大きく張り詰め始めた。

「…あ…っ? …や…っ…!」

 こんなの、淫乱だと思われる────慌てて隠そうとする手を掴んで、スネークは俺の手の甲に口付けた。そのまま指と指とを絡ませ、強く握る。

「気にするな。きっと薬のせいだ。俺もまだなんだから、ちょうど良い」

 そう耳元で囁いて、まさぐるように俺の中を掻き混ぜ始めた。男の剛棒で、肉の隘路を様々な角度に押し拡げていく。またざわざわと、快感がせり上がってくる。

「…ぁ…ぁ…ぁう…ぅ…ぅ、ん…っ…」

 いつのまにか俺も、彼の動きに合わせて、くなくなと腰をくねらせていた。俺の喘ぎ声とギチュ、グチュとくぐもった水音が、狭い空間に充満する。浮き立った筋が抉じ開けられたきつい肉の輪を擦りたて、張り出した鎌首がまとわりつく内襞を穿つ。

「っ、やぁ…っ!」

 胸元や脇腹を撫でていたスネークの手がそっと下腹部に伸びてきて、俺は思わず怯えた声を上げた。そこを触ると俺が怖がって身を竦めるものだから、締め付けが更に強くなる。それを悦んで、わざと刺激する男も少なくなかった。だが、こちらはやっと掴みかけた歪んだ快感すら吹き飛んで、萎えてしまう。

「落ち着け。大丈夫だ、触ったりしない」

 耳元で囁きながら、俺の淡い叢を囲むように、恥骨を親指で、拡げた残りの指で鼠頚部を押さえる。力強くゆっくりと揉み込みながら、彼は腰の前後運動を再開した。

「…ぁ…ぁ…っ…! …そ、れ……ダ…メ…っ…!」

「大丈夫。触ってないだろ?」

 確かに彼は、律動に合わせて揺れ動いている俺自身には、触れてもいない。けれど彼の温かい掌の中に、それが包み込まれているような錯覚に陥る。ズクンと射精感が高まって、先端からトロトロと粘っこい滴が零れた。

「…っん…あ!……あぁ……あぁ……だめ………」

 そのうち俺の弱い所を見つけたらしく、スネークは突き入れた亀頭の先や鰓の出っ張りで、そこを撫で擦り始めた。もっと激しく突いて早くイカせて欲しいと思うのと同時に、その優しい感触が、いつまでも続いて欲しいと願う。

 それでも少しずつ、快感は嵩上げされていく。ビクビクと腰が撥ねて、制御出来なくなる。

「あ、ん、ぅん…っ…ぅ…っ…ぅんんん…っ!」

 背筋を甘噛みされながら、俺は二度目の絶頂を迎えていた。

 

 

 

Re-Birth(4に続く)

 

 

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