>
■ Re-Birth (4) ■
まだ、薬の効果は切れないらしい。荒い息をつく首筋に唇を落とされ、両の乳首をやんわりと弄られているうちに、俺のモノはまた、ゆっくりと勃ち上がり始めた。
スネークが隆々と力を滾らせたままの陽根を一旦抜き出す。床に拡げたジャケットの上に俺の身体をそっと横たえさせ、覆いかぶさって深く接吻けた。
「後ろ向きじゃ、キスしにくい。イイ顔も見れないしな」
「…っ───」
スネークの言葉に、ソリダスに強引にイカされた時の顔を彼に見られたことを思い出す。羞恥と悔しさが蘇って来て、俺は思わず眉を寄せ、唇を噛んだ。
「───さっきは、何も見えなかった。焦点をずらしてたからな。今度はちゃんと見せてくれ───俺だけに」
「スネーク……」
なんて優しい嘘つきなんだろう。あの距離で、あの状況で、見えなかった筈はない。さっきから彼は俺を傷つけない為に、嘘ばかりついている。
「俺も……アンタを見てて、良いか?」
「当たり前だ」
笑って断言したスネークの背中に、俺は腕を回した。汗ばんだ肌の温もりを、纏った頑丈な筋肉を、掌に感じる。左肩の傷口に、そっと、唇を押し当ててみる。
俺を抱く彼の姿を、全部覚えていようと思った。きっと俺の人生に、こんな僥倖は、二度と無いのだから───。
口付けられ、肌を啄ばまれながら。浅く激しく突き上げられたり、ゆっくりと繰り返し奥まで出し入れしたり、優しく中を捏ね回されたり。密着した肌の間で硬く張り詰めた乳首が擦れる感触にさえ、うっとりと快美感が拡がる。
「…あ…ぁ……う、そ……気持ち……良い……」
射精に向かって追い立てるようなソリダスのセックスとは違う。少しずつ、身体中に何かが、満たされていくような。
そうして抱き合ったまま揺り動かされていると、いつの間にかまた、涙が溢れていた。先に気付いたスネークが、慌てて掌で拭ってくれる。
「何だ、どこか痛むのか?」
「…ちがう……何だろう……?」
嬉しいとか、温かいとか、安心とか───どれも正しいような、でも的確ではない様な気がする。
「……しあわせ、なのか? よく……判らない───」
幸せな記憶なんて、すべて無くしてしまったから。
残っていたのは殺戮の記憶。
与えられたのは虚構の記憶。
取り戻したのは虐待の記憶。
それだけだ。他には何もない────。
小さな呟きを何も言わずに聞いていたスネークは、しばらく俺の顔を静かに見つめていた。それから俺の身体を抱く腕に、更に力を込める。
「……これから作ればいい。幸せな記憶をたくさん、飽きる位に」
ゆっくりとまた、舌が絡め取られた。
「まずは今から、な?」
律動が再開された。
「あ、あ、あ、…っ…」
イキたい。イキたくない。
いっそ今、この瞬間に、撃ち殺して欲しい。そうすれば俺は身も心も満たされたまま、喜んで地獄へ行ける。
既に薬は切れている。次に達したら最後だと、本能的に感じた。スネークも、そろそろ限界の筈だ。時折息を詰めて、放出を堪えているのが判る。その度に俺の中で彼のモノが、大きく跳ね上がる。
「…ぁ、いや…い、やだ…っ……」
「…どうした? 何が、嫌なんだ?」
「……だっ、て……ぁあ……終わっ、て……し…まう……」
きっと次の波が来たら、この夢のような時間は終わってしまう。俺を待っているのは、辛く苦しい現実だけだ。俺は彼の胸にしがみついて訴えた。
「……大丈夫だ。終わりじゃない───始まりだ」
頬に耳元に口付けながら、スネークは「大丈夫だ」と何度も囁いた。
───そうか。大丈夫なのか。何が大丈夫なのかはよく判らないけれど、彼がそう言うのなら、きっと大丈夫なんだろう。
感じまいと必死で堪えていた力を抜くと、スネークのモノを受け入れている部分がギュッ、ギュウゥと不規則な収縮を始めた。ソリダスにイカされた時には下腹部だけだったそれが、鼠頸部から内腿へ、骨盤から背筋へと拡がっていく。熱暴走で壊れる寸前の機械のように、全身がガクガクと震えて止まらなくなった。
「…っあ! あ! あ! ぁあ!」
「…、く…ぉ…ぉ…ぉ…!」
スネークの満足げな呻き声が、耳に心地良い。もっと聞きたい、と頭の片隅で思った。
────ああ。来る…………。
きつく閉じた瞼の奥に、深紅の海が拡がった。
丸く眩い光を受けて、きらきらと輝く水面。赤く仄暗い水底から、そこに向かってゆっくりと浮かび上がっていく。きつく抱き合って、螺旋を描きながら。全身を押し潰そうとする水圧から、少しずつ開放されていく。
「あ、あ、ぁあ、ぁあ、ス、ネーク…スネー…ク…!」
俺たちを引き離そうとする奔流に流されないように、俺はスネークに必死にしがみ付いた。彼も骨が軋むほどに強く、抱き返してくれる。スネークの切っ先が最奥を突き上げる度に、俺たちはどんどんと光る水面に近づいていく。昇っていく。
「…も、あ、あ、ぁあ…っ……あぁあああぁ─────っ!!」
そこに辿り着いた途端、感じたことの無い解放感と陶酔感に全身を包まれた。
「…ぁ…ぁ……ぁ…ぁ……ぁ………」
一番深いところに叩き付けられる欲情の証を、自分の淫茎から噴き上げる精液を、胸元に倒れ込んでくる汗に塗れた男の重みを、こんなにうっとりと受け止めたことは無い。ヒクヒクと身体中の筋肉が、歓喜にうち震えている。
開いたままの唇を深く貪られると、揺り戻しのようにあっという間に二度目の波が押し寄せてきた。それは甘く優しく、しかし抗えない圧倒的な強さで。
何度も角度を変え舌を絡めあってからようやく、二人してまるで長い潜水から上がったばかりのように、荒い息を整える。そうしながら無意識に、俺はけだるい手で彼の硬い髪をまさぐっていた。触れる指からも掌からも、陶然と快感が拡がる。
彼の頭を強く抱きしめて頬を摺り寄せ、何度も唇を落として余韻に浸った。スネークも俺の鎖骨や首筋に、繰り返し音を立ててキスをしてくれた。もしかしてこういう気持ちを、「愛しい」と呼ぶのかもしれない………。
───これがセックスだとすれば、俺はスネークの言う通り、一度もセックスしたことは無かったのだ、と思える。あれは只の卑劣な暴力だったのだ、と。
「───悪い。中で出した」
俺の胸元に顔を埋めたまま、スネークは申し訳なさそうに呟いた。
「……良いんだ……嬉しかった───」
俺の場合、経験的に2、3回位までなら、中出しされても排泄感は起こらない。それでも普段はさっさと出してしまいたかったが、スネークのものなら一滴残らず吸収したいと思った。
彼は手早く二人分の汗と体液を拭き取ると、少し休め、と言って俺の身体を後ろから抱き竦めた。背中に感じる人肌の温もりと、少し冷えた部屋の空気が心地良い。全身をほぐすように暖めるように撫で擦られている内に、トロトロと目蓋が下りてきた。
背後に突然走った緊張で、一気に覚醒する。俺は彼に背中から抱かれたまま、泥のように眠っていた。いつの間にか服まで着せられている。こんなにぐっすりと眠ったのは、生まれて初めてかもしれない。しかも、他人に背中を預けた状態で、なんて。
「────どうかしたのか?」
スネークは人差し指で俺を制すると、指先で耳の後ろをトントンと叩いた。体内通信に切り替えろ、という合図だ。すぐに無線をONにすると緊迫したオタコンの声が流れてきた。
『取り付けてもらったハック・マシンが見つかって、破壊されたみたいだ。これ以上の時間稼ぎは出来そうにない。G.W.が凄い速さで復旧してる。何とか早く、ソリダスたちを排除してくれ!』
『判った。やってみる』
スネークは頷くと、一旦無線を切った。すぐに別の周波数をCALLし始めたが、相手が応答しない。しばらく待って、彼は無線を切って溜息をついた。
「やはり無理だったか。仕方ないな」
「誰だ?」
「オルガだ。俺達の装備を取り戻してくれたんだが、ここまで持ってくるのはさすがに無理だったようだ。途中で回収するしかない」
「オルガ? ───なぜ彼女が?」
「彼女は『愛国者達』に子供を人質に捕られている。正体を隠したままで、お前がソリダス達を倒すのをサポートしろと命令されてるらしい。奴らの目的はまだよく判らんが、お前が死ねば子供が殺されると言っていた」
「そんな───!」
綱渡りのように生き延びてきた自分に他人の、しかも子供の命がかかっているなんて。『愛国者達』という奴らは、何処まで俺を利用する気なのか。
「───身体の方はどうだ? 動けるか?」
スネークに問われて、俺はゆっくり立ち上がって試しに軽くストレッチしてみた。さすがに少し、腰と股関節に違和感はある。不自然に過度の摩擦を強いられた部分も、腫れぼったく熱を持っているようだ。でもそれらは昔、馴染んだ感覚だった。戦闘行動に支障はない。
それよりも、さっき眠りにつくまでの状態が嘘のように、身体が軽く、力が充実していた。オセロットに打たれた注射に入っていた栄養剤とやらが、今頃効いてきたのだろうか。
「……大丈夫だ。すごく良い。全身の細胞が生まれ変わったみたいだ───俺は、そんなに寝てたのか?」
「いいや。2、30分てところだ───さすがに若いな」
「これからどうする?」
尋ねるとスネークはひとつ大きな溜息をついて、考えを整理するように言葉を続けた。
「───アーセナルは巨大過ぎて、俺達だけで破壊するのは難しい。それに、もし核か、それ以上の何かがあるとすれば、下手に自爆させるわけにもいかない。それこそタンカーどころじゃない環境破壊になりかねないからな。コントロールルームも、艦橋だけでなく分散されてバックアップが幾つもあるようだ───やはり、ソリダス達を排除するしかないだろう」
「───奴らは?」
「艦橋への道はこの先だ。途中の格納庫に量産型RAYが待ち構えている」
「何機?」
「オルガが言うには、25機」
あっさりと言う彼の言葉に、俺は驚いて瞳を見開いた。
そんな絶望的な状況で、まだやろうと言うのか。普通なら任務はさっさと放棄して、まずは脱出を考えるものだ。
「俺もそれだけの数のメタルギアを相手にしたことはないが───何とかなるだろう」
「そんなの、とてもムリだ───!」
何度も戦っているとはいえ、メタルギア一機でも、彼は死闘を繰り広げてきた筈。25機なんて、途方もない数だった。
「だが、やるしかない」
「どうやって?」
「スティンガーミサイルを補充しておいてもらった」
「でも───!」
「どうせ次に捕まったら命はない。ま、やるだけやってみるさ」
軽口のように言いながら立ち上がったスネークは、急に真剣な表情でしばらく俺を見つめた。
「………出来ればお前にも、手を貸して欲しい。頼めるか───?」
そうか。これがこの男の強さなのだ。数々の奇跡を生んだ力なのだ。
何があっても心が折れない。
例え自分が協力を断っても、彼はたった一人でもそれをやり遂げようとするのだろう。俺なんかでも、彼の役に立てるのなら、悔いは無い。
「────判った。俺も、行く」
俺達の装備は、途中の女子トイレの掃除用具入れの中に置いてあった。ちょっとゲンナリしたが、奴らの中でここを使う可能性があるのはオルガとフォーチュンだけだから、確かに良い隠し場所かもしれない。
スカルスーツを着るには一旦全裸にならないといけないので、個室があるのも有り難かった。普段はそんなこと気にしないのだが、すっかり見られたとは言え、スネークの目の前で荒淫の跡が残る肌を晒すのにはまだ少し抵抗があった。
スーツを着込んで個室を出ると、装備を渡される。武器、弾薬、レーション等を受け取った後、差し出されたブレードに、俺は首を傾げた。
「───これは?」
「電磁ブレード。オルガからだ」
「ああ、あの時の……!」
人質が集められた部屋で、彼女がニンジャ姿で戦っていたときのことを思い出した。近接戦闘にしか使えないとはいえ、大抵のものは斬れるし、銃弾を弾く事も出来る。残弾数を気にする必要もない。俺ならもっと巧くやれるかも、と、少し羨望を感じていた物だった。
「? アンタの分は?」
「────ない。刃物は、俺の趣味じゃないしな」
彼は何故か、少し苦々しそうに首を振った。刃物には何か、嫌な思い出があるのかもしれない。
「使い方は判るな?」
「ああ」
長さも、重さも、申し分なかった。掌にしっくりと馴染む。俺は頭の中で敵を想定し、剣舞のように斬り、突き、薙ぎ払った。彼の眼の前で、ブレードを自由自在に操って見せる。ひとしきり試して頷いて刀を鞘に収めた俺に、スネークも銃をホルスターから引き抜いて頷いた。
「───よし。行くぞ」
大佐の無線がおかしい。監禁されていた部屋や食料庫では全く繋がらなかったので、外部との通信が妨害されているエリアなのかと思っていた。だが、それならオタコンとも連絡は取れなかった筈だから、説明がつかない。
しかもようやく復旧したと思ったら何度もしつこくCALLしてきて、意味不明なことを口走って勝手に切れてしまう。ナノマシン経由だから、受信しないようにも出来ない。ナノマシンは良い事尽くめのように思っていたが、こういう時は不便だ。イライラする。
「……クソッ…」
思わず出た俺の呟きに、何歩か先を進んでいたスネークが足を止め、不審そうに振り返った。
「どうした?」
「───さっきから、大佐の様子が変なんだ。何度もCALLしてきて、俺が出ると訳の判らないことを言って、一方的に切れる」
「訳の判らないこと?」
「ああ。カワグチノセグチとか、ハサミがどうとか、ゲームの電源を切れとか───とにかく意味がわからない」
「ふむ……」
「そういえば、アンタとキャンベル大佐とは知り合いなんだろう?」
「ぅん? ロイ・キャンベルか? 古い友人だ。俺の育ての親の一人と言っても良い。───お前のいう大佐ってのは、まさか、ロイの事か?」
「ああ。だが、妙なんだ。アンタのことを、シュミレーションに入っていないから無視しろと言ったり、『シャドー・モセスの真実』をゴシップ記事扱いしたり───とにかく『ソリッド・スネーク』に否定的な感じで───」
「───確かに妙だな。何か事情があるのかも知れんが……。さっきも言った通り、FOXHOUNDはモセスのあと解体された。大佐も国連に出向中の筈だ。今回のテロ対応で、急遽呼び戻された可能性もゼロではないが───おい、オタコン。聞いてたか?」
『ああ、聞いてた。ちょっと待ってて。調べてみるよ』
「とにかくしつこくて、気が滅入る。混乱する」
俺が頭を振って溜息をつくと、スネークは顎をさすりながら少し考え込んだ。
「……調べがつくまで、無線には出ない方が良いかもな」
「そうしたいが、出ないとCALL音がいつまでも煩い。切れた後しばらくは静かなんだが───」
「受信拒否は出来ないのか? ならガチャ切りするしかないな」
話しながら促されて、再び俺達は歩き出した。調べが終わるまで待っている時間はない。
「『ガチャ切り』?」
「すかさず出て、すかさず切る。面倒だが仕方ない───行くぞ」
スネークは胸元のポーチからカードキーを取り出すと、こちらを振り返った。
「ああ」
蜂の巣をつついた様に後から後から湧いては頭上から襲ってくる天狗兵の群れを、俺達は片っ端から始末していった。他人に完全に背中を預けて戦ったのは、生まれて初めてだった。例え味方が後ろに居てもそいつが殺られないとは限らないし、味方の弾が俺に当たる可能性もある。いつも背後にも意識を配っておく必要があった。
だが今は、目の前の敵に集中出来る。俺が斬り結んでいる間にも、その先や物陰から俺を狙っている敵を、スネークが次々倒してくれる。縦横無尽に動く俺の身体の近くを彼の銃弾が何度も掠めたが、自分に当たるかもしれないなんて不安は少しも感じなかった。
俺はスネークの射撃の速さと正確さに舌を巻いたし、彼は脚まで使った軽業のような俺のブレード遣いに驚嘆していた。
まさに山のように死体が積み上がり、足の踏み場もなくなってきたところで漸く、敵の増援は姿を見せなくなった。
ノーダメージとは言えなかったが、二人とも大きな負傷はない。俺もスネークも、詰めていた息を大きく吐き出して呼吸を整えた。改めて周囲を見回し、たった二人でよくこれだけ殺れたものだと思った時、オタコンからのCALLが入った。
『雷電。大佐のことなんだけど……判ったんだ。君の大佐が何処にいるのか』
「何処なんだ?」
『───そのアーセナルの中。というより君の脳の中、と言った方が正しいかもしれない』
「? どういうことだ?」
『色々検証してみたけど、大佐の信号は、そのアーセナルの中から発信されてるとしか思えない。それに暗号化コードも、アーセナルのA.I.であるG.W.と同じなんだ』
「……つまり?」
『君と話していたのは、アーセナルのA.I.ってことになる。もちろん直接話してたわけじゃなく、G.W.から送られてくる信号を君の脳内ナノマシンが受け取り、脳の冗長部分を器質操作して、大佐を発生させるって仕組みだ。つまり大佐は、君の脳の中に存在する』
「そんな……馬鹿な!」
奇想天外としか思えない説明に、つい激昂する俺の肩をスネークが押さえる。
「落ち着け───お前、大佐に会ったことは?」
「いや───ない……」
『大佐の様子がおかしくなってるのは、G.W.のA.I.に例のウィルスが効き始めたんじゃないかと思う。緊急停止用にしては、発動までちょっと時間が掛かり過ぎてる気がするけど、僕のワームにはそんなの組み込む暇はなかったし───今のところ、そうとしか考えられない」
「すべて……幻……? では俺が、今までしてきたことは───?」
───大佐は俺の脳の中? 実在しない人間に指示されていた? では実在するのは誰だ? 実際に起こっている事とは何だ? 現実とは? 記憶とは?───
頭の中に怒涛のように疑問が渦巻いて、眩暈がした。グラリと倒れ掛かった身体を、力強い腕に支えられる。
「雷電!」
「スネーク……一体、どういうことなんだろう?」
「判らん───。俺に言えるのは、俺の目の前にいるお前は、幻じゃないということだけだ。お前は確かに、ここにいる」
「………」
黙り込んだ俺の肩をスネークがぽんぽんと叩き、そのままグッと押さえつけた。その掌の温かさに、少し気持ちが落ち着く。
「どうする? やめたければ、やめても良い。誰の命令なのか、何の為の任務なのかも判らんのだから、放棄しても良い筈だ。脱出するのなら、手を貸すぞ?」
───確かに、そうかもしれない。だが『愛国者達』にせよ、ソリダスたちにせよ、何かとてつもない凶事を企んでいる事は間違いない。今それを阻止出来る可能性があるのは、俺達だけ。放っておく訳にはいかない。
それに、きっとスネークは、たった一人ででもそれをやり遂げようとするのだろう。一緒に脱出するのならともかく、彼を置いて自分だけ逃げ出すなんて、俺には考えられなかった。
「………いや。やめるわけにはいかない───任務だからじゃない。俺の意思で、アンタと行く」
(Re-Birth(5)に続く)