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■ Re-Birth (9) ■
おずおずと応える舌遣いは手淫や口唇奉仕と比べると別人のように稚拙で、本当に性欲処理にしか使われていなかったのだな、と感じた。耳元や首筋に顔を埋めると、シャワーで薄れてしまってはいるが、やはり柑橘系の花のような好い薫りがする。
深く口付けたあと襟元をはだけさせると、白い肌に残った鬱血が目に入って俺は思わず眉を顰めた。うっとりとなされるがままだった雷電がハッとしたように、慌ててローブの袷を両の掌で押さえる。
「……消してもらえるか?」
そう言ってベッドサイドのナイトランプに、伏目がちにチラリと視線をやった。裸を見られるのが恥かしいと言うより、陵辱の痕を晒したくないのだろう。俺は頷いてランプのスイッチを切った。カーテンの僅かな隙間から差す弱い日差しだけが、ぼんやりと俺達を照らしている。N.Y.は今日も曇り空。雨になるかもしれない。
俺は白い肢体に覆い被さって、あちこちに唇を落とし、指を這わせた。その度に腕の中の身体が小さく跳ねて、熱い吐息を漏らす。滑らかな肌の感触に、少しクラリとした。
一頻り上半身に愛撫を散らして喘がせてから、白い双丘の狭間で息づく蕾にそっと指を触れさせる。雷電が一際大きく、全身を震わせた。そこはすでに汗でしっとりと湿ってはいるが、潤いはない。
身体を下にずらして膝の裏に肩を入れ、両脚の間に顔を埋める。動いた拍子に俺の腹から胸へと雷電の濡れた陰茎の先が触れていたが、少し息を詰めただけで、萎えることはないようだ。
さっき正常位でやった時も俺の腹に擦れていたが、あの時も特に、怯えた様子はなかった。意図的に「触る」のはダメだが、不作為に「当たる」のであれば大丈夫らしい。そうでなければ後背位でしか犯せなくなってしまうから、そこまではソリダスも禁じなかったのだろう。
そのあたりに「ペニスを直接刺激出来ない」というトラウマを、治すカギがあるかもしれない。少しずつ慣らして恐怖心を打ち消してやれば、普通にセックス出来るようになる可能性もある。
───いつか俺が居なくなった後、愛する女性と子を成すことが出来るように……。
少し切ない気持ちで、喘ぐように収縮している小さな蕾に舌を這わせた。ビクビクと跳ねる脚を掌で優しく撫でて宥めながら、ゆっくりと舐め回す。内部まで洗ったのか、微かに石鹸の匂いがする。時折偶然を装って鼻先で睾丸や肉茎をつついてやると、雷電は腰を跳ね上げて小さな声を漏らした。
「ここ……薬、塗ったのか?」
「…いや……別に。怪我じゃないし───」
「意外に不精だな。傷用の軟膏は洗面にも置いてあっただろ? ちょっと待ってろ」
俺は俯いた雷電の額に軽くキスをしてから一旦ベッドを出て、殺菌剤入りの傷薬を戸棚から引っ張り出した。
まずは入り口とその周辺に塗り、丹念に揉み解す。それからもう一度指先にたっぷりと軟膏を乗せて、指と一緒に少しずつ内部へ塗り込めていった。傷をつけないよう、じっくりと時間を掛けて。
「…ぁ、……ぁ…っ……は……っ……」
男が後ろで感じられるかどうかなんて、向き不向きがある。要は直腸内から前立腺を刺激しやすいかどうかと、そこと入り口付近がどれくらい敏感かどうかで、幾ら訓練しても体質というか身体的特徴みたいなものはどうしようもない。才能、という言葉を使うのもおかしいが、生まれつきある程度、決まってしまっているのだ。
俺なんかは指でされようが入れられようがせいぜいムズムズするだけで、セックストレーナーに「アンタの身体は受身に向かない。せっかくセクシーなお尻をしてるのに」と有り難いんだか何だか判らないご託宣を受けた位だが。
雷電の方はそこの表面が敏感なだけでなく、内部の感じる部分も当たりやすい所にあるらしい。指で少し弄っただけでも触れてもいない淫茎がヒクヒクと震え、蜜を溢し始めている。本来の性器への刺激が封じられた為に、後ろの方がまるで女性器のように発達してしまっているようだ。
無理やりに早く開花させられたとはいえこんなに感じる身体では、虐待ではない形で男とのセックスを覚えたら、のめり込んでしまっても無理はない。コイツのオリジナルとかいう奴が男狂いだったというのも、あながち嘘ではないかもしれない。
「……、も…っ……早、く…っ…」
そうは言ってもあれだけ酷使させられたのだから、念には念を入れておかないと。そこの粘膜は女性器より更にデリケートだし、自浄作用もないのだ。
首を振って身悶えるのを、唇で乳首や首筋に愛撫を散らして宥めてやる。本来なら男の快楽の中心である部分に直接、快感を与えてやれないのは意外に厄介だった───だからこそ元々感じ易かった後ろの方の性感が、更に鋭敏になったのだろうが。
前立腺が浅い位置にある上に、口もそこも小造りなのと同じく消化器官の管が全体的に細いようで、普通なら括約筋さえ過ぎてしまえば緩やかになるはずの腸壁の締め付けが、かなり奥まで続く。
女の代わりにして自らの欲望を満たしたいだけの男にとっては好都合なことだらけだが、今のこいつを満足させてやるには内部から刺激するしかない。
せめて数日間はそっとしておいてやりたかったのだが、仕方ない。何とか指だけでイカせるしかないか。しつこく解してから、伸ばした指先でリズムをつけて感じる所を揉んでやると、雷電は髪を振り乱して俺の肩に爪を立てた。
「や…っ…も、……ア、ンタの……入れ、て…っ……」
「ダメだ───指だけで我慢しろ」
囁いて口付けると、雷電は潤んだ瞳をしばたいて顔を背けた。傷ついた表情で唇を噛み締める。
「…やっぱり───俺なんかじゃ……」
伏せていた睫を上げると、縋りつくような瞳で俺を見た。快楽からではない震える手で、俺の胸元を押し返す。
「無理にしてくれなくて、いい───こんな事、しなくても……俺、ちゃんと、役に立つから……だから、一緒にいさせて……一人にしないでくれ……」
身を竦めて、雷電は祈るように哀願するように言葉を押し出した。どうやらコイツの頭の中では『挿入しない=不用品』という事らしい。労わってやりたいだけなのに逆に傷つけてしまったようで、俺は考えあぐねて、溜息をついた。
「───やれやれ。困った思考回路してるな、お前。せっかくしばらくは、我慢しようと思ってたのに。お前のせいだぞ?」
俺の胸を押し返していた手を取って、自分のモノに導く。それは既に熱を帯びて、布地の下で硬く勃ち上がっていた。それが何を意味するかは、言わずもがなだろう。
「ぁ……っ?」
一瞬ビクリと引きかけた指が、小さく震えながらもおずおずと動き始めた。形の良い指が確かめるようにゆっくりと、全体を揉み始める。人差し指と薬指で雁首を挟んで擦りたて、中指で先走りの液を塗り拡げるように撫で回す。時折、睾丸の方まで擽るのを忘れない。
純潔の反応に、娼婦の手管。そのアンバランスさが余計に、憐憫と欲情を煽った。胸がきゅうっと、締め付けられるような気がする。
───そういえば、『可愛い』と『可哀想』は、語源が同じなんだったか。あの時こいつを抱いたのに僅かの同情も計算もなかったといえば嘘になるが、愛しいと思ったのは確かだった。
「………納得したか?」
「…ぁ……っ…」
一心に俺のモノを高めていた指を静かに掴んで離させると、自分が無意識にやっていた事を認識したのか、雷電はバツが悪そうに目を逸らした。放っておくとまた何か、ネガティブなことを言い出しそうだ。余計なことを考える暇を与えずに、行動で示してやった方が良いのかもしれない。
俺はすぐに下着から熱く猛ったモノを取り出し、ヒクついている狭い蜜口にあてがった。軟膏もまだ乾いていないし、指でたっぷりとほぐしてあるから、もう入れても大丈夫だろう。
グッ、と押し付けると、あんなに柔らかくなっていたのに、意外なほど強い力で拒まれる。俺は焦らず先走りをなすり付けながら、何度も軽く突いてはそこの緩むのを待ち、呼吸のタイミングを見計らって少しずつ押し込んでいった。
熱い肉の輪に、亀頭が痛い位に締め上げられる。既に経験済みとはいえそんな小さな窄まりが、一見何倍もの大きさの自分の剛直を飲み込んでいく様は、何か不思議な感じがした。
そこを過ぎると今度はまとわりつく肉襞が奥へ奥へと誘い込むように吸い付いてくる。女性ならある細かなザラつきはないが、熱い腸壁の微妙な襞のヌルヌルした軟らかさと、それに反した喰いついてくるような締め付けは、確かに堪らない極上の感触だった。バキューム=フェラに近い感覚かもしれない。
「ひ、っ…ぃ…ぃ……!」
喘ぎを抑えようと必死に噛み縛った唇が、薄暗がりの中でも赤く染まっている。俺は腰を進めるのを止めて、その唇に触れるだけの口付けを繰り返した。
「───そんなに歯を食い縛るんじゃない。唇が切れる。口を開けて、声が出そうになったら息を吸い込め」
全身から少し力が抜けたところで教えてやると、雷電はこくりと頷いて素直に軽く口を開けた。
「…ハ…ッ……ハ、ァ…ァ…ッ……」
乱れた熱い呼吸に嬌声を紛れさせて吐き出す。
「そう、良い子だ……まだキツいか? 痛くないか?」
息をつくのを待って耳元で囁くと、情欲に潤んだ瞳が驚いたように見上げてきた。こんな風に挿入時に気遣われた事など、今まで無かったのかもしれない。
「…だい、じょうぶ……痛いわけじゃ、ない……」
恥かしい声が出そうだったから───。雷電は小さくそう呟くと、甘えるように俺の鎖骨に額を摺り寄せた。可愛い。俺は思わず笑みを浮かべながら、その旋毛の辺りに唇を落とした。
「そうか───なら良いが、辛かったらそう言え。何とか考えてみるから」
そこが馴染むまで、ゆっくりと出し入れする。そっと突き上げる度に「あ」の形に開いたままの薄く赤い唇が少し大きく息を吸い込み、仰け反った喉がヒュッと小さな音を立てた。
段々と、互いの分泌液でぬめりが増し抵抗が少なくなって、締め付けというか吸い付きはそのままだが抽送は楽になってくる。俺はピストンのスピードを上げ、時折、角度や深さを変えて突き上げた。その度に雷電は慄くような喘ぎを吐息に混ぜて声を震わせた。くなくなと腰がくねって、絶妙な刺激が与えられる。
「…ァハ…ァ…ッ…ン、ァ…!」
雷電のそこがより密着するよう、脚を更に大きく拡げさせて膝を折り、俺の腰に巻きつけさせた。こうすれば自分でも、押し付けて快感を得やすいはずだ。
案の定、しばらくすると無意識なのだろうが、腰をくゆらせながらも俺の下腹に熱く濡れそぼったモノをグリグリと押し当て始めた。突き上げるたび溢れ出す粘っこい雫が、互いの肌の間でいやらしい音を立てる。
そうするうちに女と犯っている時とは少し異なる、搾り立てられるような射精感がじわじわと迫ってきた。このままではまた、中で達してしまいそうだ。俺は構わないが、後で不快な思いをするのは雷電の方だろう。本当は入れる前に付けておくべきだったが、そんな余裕はなかったので仕方ない。
「…っ、おい、ちょっと、離せ。ゴム、付けるから」
首筋にかじりつくようにきつく回された腕を軽く叩くと、雷電は必死に首を振って抗った。しがみつく腕に、逆に更に力が込められる。閉じられていた目蓋が少し開いて、潤んだ瞳が俺を見上げた。
「付け、ないと、……嫌か?」
「そりゃ、俺は、このままの方が、イイが」
「……俺、も…このまま、が…イイ……俺の、中……に、して……」
「いい、のか? 後で、気持ち、悪い、だろ?」:
声を潜めて話しながらも、あまりの気持ち良さに腰の律動を止められない。雷電には申し訳ないが、ソリダスが惜しいと言った意味が少し判るような気がした。
「いい……いい、から……この、まま…っ……」
もしかして、中で出される感じが好きなのだろうか? アーセナルでも「嬉しい」とか言ってたが───変わってるな、とは思ったが口には出さなかった。何しろ特殊な環境で特殊な調教をされていたのだから、普通と同じと考えるほうがおかしいのだろう。ともあれさっきの様子では、一回中出しされた位で腹が下るという体質でもなさそうだ。
そんな事をつらつら考えている内にも、射精感がどんどんせり上がってくる。本人も良いと言っているのだから構わないのだろう。俺は考えるのを止めて、快感を追うのに没頭することにした。
「───わかった。いくぞ」
嬌声が漏れないよう深く口づけて、大体掴めてきた弱点を亀頭で激しく突き上げてやる。組み伏せた身体が一際大きく跳ね上がった。雷電の代わりにベッドがギシギシと割と大きな悲鳴を上げたが、今更止められない。
「ン、ン、ンゥッ、ンンーーーッ…!」
深く唇を合わせたまま、声にならない声を自分の口腔に吸い上げる。下腹を密着させて挟まれた陰茎を押し潰すように刺激してやると、トロトロと溢れた蜜がぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てた。
「…っ、あ、も───────いく……」
息が続かなくなるまで貪っていた唇を離すと、雷電はそう小さく呟いた。途端に汗に塗れた白い肢体が、ガクンガクンと波打ち始める。
「…ひぁ…っ! ……ぁ、ぅぅぅぅぅぅぅ────っ!!」
苦悶と恍惚の入り混じったような表情で、糸のように細い悲鳴のような声を上げて身体を弓なりに仰け反らせ、硬直させる。下腹に、押し潰された淫茎から吹き上がった熱い粘液が掛かるのを感じた。
同時にただでさえキツかった肉の締め付けが、ギリギリと食い千切らんばかりのものになった。その感触に俺も堪らず、奥深くに熱い迸りを放つ。何度も更に押し付けて、奥へ、更に奥へと叩き付ける。その度に雷電のモノも、押し出されるようにまた、トロリ、トロリと白い樹液を吐き出した。
「…ぁ…ぁ…ぁぁ……」
腕の中の身体のそこここが、軽く電気を流されたようにヒクヒクと震えている。空気を求めて開かれた唇の間に覗く赤い舌さえ、小さく痙攣していた。俺のモノを咥え込んだそこも、まるで残滓も一滴残らず吸い上げるように、不規則な収縮を繰り返している。
雷電は目を閉じたまま酔い痴れたような表情で俺の髪をまさぐっては、わななく唇を押し当てた。脚もぎっちりと俺の腰を挟みつけたままだ。身動きも取れないことだし、俺は奴のしたいようにさせて、汗の浮いた首筋や耳元にそっと口付けを繰り返してやった。
快楽の余韻とでもいうべき感覚は普通の男ならせいぜい数秒から十数秒、俺なんかは呼吸さえ整えればあっという間に収まるものだが。雷電の場合はかなり長く、深く続いているようだ。後ろでイクせいか、オーガズム曲線が女性に近いのだろう。アーセナルでは薬物の影響かとも思ったが、そうでもないらしい。
「…あぁ……」
しばらくそのままで待っていると、ゆるく開いた唇から満ち足りたような大きな吐息が漏れ、俺の腰を挟み込んだままで時折痙攣していた脚が、ずるりとシーツに落ちた。同時にしがみ付いていた腕も力を失って、抱擁が緩やかなものになる。
身動きが取れるようになったので、手早く後始末をしてやる。雷電はしどけなく脚を投げ出してされるがままになっていたが、その間、恥かしそうに両方の掌で顔を覆っていた。
その手をどけさせ、汗で額に張りついた髪を掻き揚げてやる。大丈夫か、と声を掛けると、雷電は薄く目を開いてクスリと笑った。
「何がおかしい?」
「アンタ、意外と心配性なんだな。大丈夫に決まってるだろう、あんなに優しくしといて」
「その……出さなくて、いいのか?」
「いい。何か───あったかいカンジがする」
雷電は体内の感触を確かめるようにそっと下腹の辺りに自分の掌を乗せ、また目を閉じて微笑んだ。
「そうか───もう、眠れそうか?」
「ああ───」
毛布を掛け直してもう一度、腕枕をしてやると、おずおずと甘えるように擦り寄ってくる。その仕草が可愛くて、俺はまたその顎を掬い上げ、深く口付けた。
「───アンタ、意外とキス魔なんだ?」
「そうでもないぞ? 女にはよく『冷たい』って言われてたし───何だろうな、お前にはしたくなるな……お前がキスして欲しそうな顔をしてるんじゃないか?」
俺の言葉に小首を傾げた、ほんのりと赤く柔らかい唇をもう一度そっと啄ばんでから、全身を軽く伸ばす。
「さ、もう寝るぞ。明日からも、のんびりしていられないしな───2、3日中に、ここも引き払う」
「……つけられた?」
雷電が少し不安そうな表情を浮かべる。
「いや、それはないだろうが、念の為だ。いつも一仕事の後はそうしてる。オタコンのガラクタもかなり溜まってきたしな。オルガの娘の件の調べがつくまで、俺達は大工仕事だ。───お前、家のリフォームとかやったことは?」
「いや、ない。塹壕なら何度か造らされたが───ドアや壁に、鉄板を入れるのか?」
雷電の言葉に俺は少なからず驚いた。一応このアジトは殆どの場所に、マシンガンぐらいは防げる程度の弾除けの鉄板が入れてある。ここに来てからの僅かな時間に、そこまで察するとは。
「良く判ったな?」
「ノックの時、妙な音がしてたから……」
「お前、耳も良いんだな。スカウトにも向いてるかもしれん。まあ鉄板といっても、気休め程度だがな。無いよりはマシだ」
形の良い耳朶をそっと指先でなぞると、雷電は擽ったそうに首を竦めた。いくら美形だと言っても大の男で、しかも接近戦なら俺以上に強いかもしれない相手なのに、そんな仕草まで随分と可愛く見える。
───まずいな。これは本格的に、捕まってしまったかもしれない。
声を出すまいと噛み締めた時についたのだろう、薄めだが柔らかい唇に少し残る歯形を指先でなぞった。その微かな痕さえ、愛しく思えた。
「───次はもうちょっと、防音の効いた家にするか」
「え? ───あ…っ」
一瞬怪訝な顔をしてからその言葉の意味に気付いて、雷電はまた頬を真っ赤に染めた。毛布を額まで引っ張り上げて、顔を隠してしまう。
「……俺だってお前のイイ声、ちゃんと聞きたいからな」
「───アンタって、意外とスケベだったんだ……」
目が見えるところまで指先で布をずり下ろして囁くと、赤い顔のまま上目遣いで俺を見上げて呟いた。
「───ガッカリしたか?」
「ガッカリじゃないが、意外なことばかりで───ビックリは、した」
「お前それ、さっきも言ってたな。良い意味での驚きだと良いが」
「もちろん、良い意味だ。確かに、想像とは少し違ったが……本物の方が、ずっと良い───…」
そう言ってから雷電は、まじまじと俺の顔を見詰め、それから少し目線を俯かせた。しばらくして意を決したように俺を見上げる。
「スネーク───キス……しても、いいか?」
今度は一体何を言い出すのかと身構えていた俺は、その台詞に思わず噴き出してしまった。
「……そんなこと、一々訊くな。したい時にすればいい。俺もキスしたければするし、嫌なら拒む。お前もそうしろ」
「そうか……判った。俺も、そうする」
雷電はそう言うとそっと両の掌で俺の頬を包んで目を閉じ、まるで祈りをささげるかのように口付けた。何度も軽く、唇を触れさせるだけの。
「───わざわざ宣言するから、どんな濃厚なことをしてくれるのかと思ったら」
俺が笑ってやりかえすと、少し拗ねたような顔をしてまた毛布に潜り込んでしまう。それから目だけを出して、ごにょごにょと言い訳をした。
「……俺はさっき産まれたばかりなんだから、仕方ないだろう?」
「───そうか。そうだったな。なら子供はもう、寝る時間だ」
後ろから抱き込んでやると、またそっと掌を重ねてくる。きっとそうしていると、安心するのだろう。俺はその手を軽く握って、まだ少し湿りを帯びている柔らかなプラチナ・ブロンドに口付けた。
「……子供……オルガの子供は、無事なんだろうか? ───まさか、俺が軍に戻らなかったせいで殺される、なんてことは?」
雷電は振り返って、必死な表情で見詰めてきた。俺はこいつが随分、オルガの子供の無事を気にかけていることに内心驚いた。事情があったし、彼女が命じたわけではないが、それでも彼女は自分を陵辱した奴等の指揮官なのだ。普通なら「知ったことか」と背中を向けるか、そこまで冷酷になれなくても複雑な心境になるものだと思うが。
雷電は心底、子供の無事を案じているようだった。自らも地獄の底で辛酸を嘗め尽くして生き抜いてきたはずなのに、それでもこいつは、見も知らぬ他人を思い遣る優しさを奇跡のように保ち続けている。
「───いや、大丈夫だろう。お前はソリダスを倒したんだから、彼女はちゃんと役割を果たした。それに、あれだけの規模とレベルを持つ私兵部隊はそう多くない。奴らもまだ、彼女を手駒として置いておきたいはずだ」
俺は雷電を安心させるために力強く笑って、腕枕をした手首を回し、またその頭を撫でてやった。だがこいつが俺のところに来た事は、ローズとか言う女を通じて奴らにも既に知られている筈だ。───無事だといいのだが。
「そうか───だが、子供が人質になっている限り、また何かあれば利用される?」
「ああ。だから早く助け出さないとな。また殺りあうのは御免だ」
「そうだな……俺も、彼女とは戦いたくない」
「だがまあ、居場所が判らんことには、どうにもならん───さぁ、もう休め。俺はここにいる。どこにも行かない」
「……ん……」
雷電は捩っていた上半身を元に戻して、枕にしている俺の腕にまた少し頬を擦り付けた。匂いを嗅いでいるのかもしれない。
しばらくそうしているとやはり疲れていたのだろう、規則正しい寝息が聞こえ始めた。それを聞いていると俺も、段々と目蓋が重くなってくる。潜入の準備から丸二日近くまともに眠らず、ぶっ通しで緊張状態にあったのだ。さすがに疲労も溜まっている。こいつが眠ったら、オタコンと今後のことを相談するつもりだったが───。
雷電は既に熟睡しているようだが、俺の手はしっかりと握り締めたままだ。指を解けばすぐに、目を覚ましてしまうだろう。
───仕方ない。俺も少し、眠るとするか。何か展開があれば、オタコンが起こしに来るはずだ。
…………結局、本当に手を繋いで寝ることになったな。
苦笑しながら剥き出しの白い肩口に口づけて、そっと毛布を掛け直してやる。腕の中の雷電は少し身じろいで背中を丸め、俺の手を握る指に力を入れた。俺はその身体を抱き竦め、指先に少しだけ力を込めて握り返して目を閉じた。
(Re-Birth 完)
思い出したよ……愛するキャラの幸せを、公式などに求めてはいけないという事を……。──────ふ!ざ!け!ん!な!
MGS4で色々溜まっていた不満が、MGRでついに爆発してしまいました。サイボーグ雷電ちゃんの痛覚抑制解除とともに、ワタクシのSM抑制も解除です。スネ雷ではSMはやるまいと思い、ソリ雷さえ封印していましたが、それもここまで。貴様らがそんなつもりなら、こっちも本気出してやる!
雷電ちゃんを過去の『切り裂きジャック』として覚醒させるなら、こっちも昔の『東大阪のSM作家』に戻ってやろうではないか!
(ああ、C翼のときもこうだったなぁ……怒りが最大のエネルギー源なワタシ……)と、いうわけで、アーセナル以降を大改変です。原作だの公式だのクソ喰らえ! ソリ雷&SM要素てんこ盛りの、ラブラブ、アチチなスネ雷ワールドにしてくれるわ!(でも流石に浣○は自重しました。途中まで書きましたけどね……)
しかし(私にしては)長編は、辻褄合わせが大変でした。あ~しんど。「MGS2のアーセナル以降は原作無視」を決め込んだので、勿論、スネークたんは雷電ちゃんの心の傷が癒えるまで、5年だろうが10年だろうがバリバリ現役です! 普通よりちょっと老化が早いかな?位で、いきなり70代の爺になったりはしません!(T^T) 若い恋人と犯りまくってりゃ、心も身体も若返るさ! ついでにオルガもナオミも死なせないぞ!
雷電ちゃんはライコフの息子ではなく、ある程度時間が経ってからのクローンだと考えれば、一応、スジは通るよね?(ヴォルギンの溺愛っぷりを思えば、ライコフのために賢者の遺産もホイホイ使うやろ。METAL GEAR RAIDENでの股間認証システムでもバレないんだから、雷電とライコフのDNAは同じはずだし)
でも、今回の雷電ほど一途にLovin’ youされちゃったら、もしスネークがホモフォビア(同性愛嫌悪者)でもイチコロじゃなかろうか?と思ってしまうのは私だけ?(^^;) 我ながら、恐ろしいほど健気で可愛い……。
ソリパパがジェラシー感じるのも無理ないねぇ……。