■ ALL myself, for YOU ■

 

 

 

「……う、ん…っ……はっ……あ、ぁ…っ」

 絶頂が近い。込みあげる快美感に半分朦朧としている。もうどれ位そうされているのか判らない。スネークの指が俺の中に埋め込まれ、唇が俺のものを包み込んでいる。彼は動かない。動かさない。俺の腰だけが壊れた玩具のようにガクガクと、快楽を貪っている。

「ス、ネーク…っ……や、だ……俺にも、させ…て……」

 脚の間で俺のものとその奥の窄まりを愛撫し続けているスネークの強い髪に震える指を絡めて引っ張った。

「ん? 無理しなくていいんだぞ」

「ちがう……したい」

 彼は優しい。時折、もどかしくなる位。かつての男達が当然のように俺に強制した口での奉仕や、屈辱的な真似は一切要求しない。ただ俺を酔わせ、感じさせ、抱き締めてくれる。そうされていると自然に「してあげたい」と言う気持ちが強くなる。

 スネークの手を借りて抱き起こしてもらい、体勢を入れ替える。朝剃ったばかりなのに少しヒゲの生え始めた顎、太く逞しい首筋、頑丈な筋肉を纏う胸板へ、ゆっくりと唇を落としていく。スネークが擽ったそうに喉で笑う。そのまま体を下にずらし、目の前にそそり立つ彼自身を俺は迷わず口に含んだ。

「……ん……ぅん…っ……」

 先端の割れ目から、裏側の筋、膨張した袋まで、指で唇で、舐め、扱き、吸い上げる。スネークが低く呻く。自分の口の中で彼のものが力を漲らせてゆくのが嬉しい。

「お前……上手いな」

 そりゃあ、昔は随分仕込まれたから。心の中でつぶやく。

「切り裂きジャック」なんて呼ばれる前の俺は、毎日何人もの男のものを咥えさせられていた。あんなところでも娼婦はいることはいたが、いかんせん絶対数が少ない。生っ白くて女顔のひ弱なガキは、格好の「女の代用品」だった。昼は戦闘の最前線に狩り出され、夜は「指名客」たちを満足させなければ食事も寝床も与えられなかった。まずは男たちを満足させることが、その次は「切り裂きジャック」になることが、俺の生き延びる術だったのだ。

 過去があるから今の俺がある。彼と出会い、彼と共にいられる。だから今では、自分の過去を否定する気はない。

 それでも、思い出すと少し辛い。

 生まれてから死ぬまで、彼だけのものでいたかった、彼しか知らないでいたかったと、心のどこかが泣いている。

 でも、そのおかげで彼に少しでも快感を与えることが出来るのなら、目を背けたくなるような過去も全くの無駄ではなかったと思えるのだから不思議なものだ。

「……っ…もういい、雷電、放せ」

 口腔と指先に感じる小さな痙攣で、スネークの射精が近いことが判る。無骨な指が俺の髪を優しく掻き揚げ、腰が後ろに引かれた。俺はしっかりとしがみついて、抜き出されないようにする。

「雷電?」

「…っ、出していい、飲むから。飲みたい」

 俺の手で、俺の口で、俺の身体でイって欲しい。

 根元を扱きあげ、睾丸を柔らかく揉みたてながら、唇を窄めて少し強めに吸い上げ、顔を前後に揺らして射精を促す動きに力を入れる。

 スネークの指はしばらく逡巡するように俺の髪をまさぐっていたが、だんだんとそれが俺の頭を押さえつけ、揺さぶる動きに変わってくる。

 俺は噎せたり歯を立てたりしないよう、口の中で舌を丸めて、先程までの愛撫で蕩けている秘部を自分の指で揉み解しながら、されるがままにそれを受け止めた。

「…っ……雷電…っ」

 口蓋に、温かい迸りを感じる。心持ち顎を引いて、少しずつそれを飲み下した。

 生温かい、白く濁った青臭い液体。微かに海の味がする。以前は自分のものですら、匂いを嗅ぐだけで吐き気を覚えたのに、今はそれが喉の奥を伝って胃を暖めている感覚が愛しいと思う。

「…っ、すまん、大丈夫か?」

「う、ん、平気。…………なぁ、コレってタンパク質だから、そのうち、俺の身体の一部になるよな?」

「はぁ? 何言ってるんだ」

 呆れたような声を出しながらも、優しい指が俺の頬を撫でる。

「だったらいいなと思って。もしそうだったら、一生コレだけでもいい」

 細胞が生まれかわり死にかわり、スネークの精だけで出来た、スネークのためだけの身体になる。そんな他愛のない考えに、俺はうっとりとした。

「……俺を干物にする気か? それよりちゃんとメシを食え。俺のメシは結構いけるだろうが」

「ああ、わかってる。ちょっと思っただけ」

 強い腰の上に跨って、まだ硬度を保っている彼のものを自分からあてがい、腰を落とす。一瞬の痛みのあと、身の内を満たされる快感が襲ってくる。

「…ぅあああ…っ!……はっ…ん……あぁ……スネー…ク……」

「雷電……」

 気遣う指。甘い囁き。

 伸ばした腕に応えてスネークが上半身を起こし、俺の身体を抱きしめてくれる。がっしりとした首筋に腕を回して、俺もそれに応じた。しばらくそのまま、お互いの鼓動を確かめ合う。

「やっぱりこうやって、抱き合ってるのがいいな。落ち着く」

 触れ合った肌から彼の熱と優しさが流れ込んでくる。頬に耳元に首筋に、スネークの唇が降り注いでくる。その度に身震いするほどの陶酔がそこから拡がってゆく。俺はゆっくりと腰をくねらせ、咥え込んだそこで彼のものを捏ねるように揉み立てた。

「……あぁ……ぁ、ん…っ……ス、ネーク………気持ち、いい……?」

「ああ。いい気分だ。……しかし、大丈夫か? 無理しなくても良いんだぞ?」

「…無理、なんかして…ない……すごく、イイんだ……このまま死にたい、くらい……」

 俺の中の最も熱く柔らかな肉が、スネークのものにねっとりとまとわりつく。ごつごつと浮き出た血管の一筋一筋が、そのまま神経を刺激し、腰の奥から脊髄を駆け抜け全身に甘い痺れが走る。以前は唾棄するほど嫌悪した行為が、今はこんなに快い。苦痛より愉悦が、屈辱より愛情が身の内を満たして溢れ出る。「犯されている」というより「包み込んでいる」感覚。

「おい。死ぬなんて、口にするもんじゃない」

「……わかって、る……でも……。……あぁ……スネークも、動け…よ……っ」

 死、と言う言葉にスネークは過敏だ。きっと俺の知らない数々の死別が、彼を苦しめてきたのだろう。それでも。今が幸せすぎて時の経つのが怖い。このまま、一つに繋がったまま、消えてしまえたらいいと思う。

 ツンと張り詰めて尖った乳首を弄んでいたスネークの両の掌が、俺の尻の肉をがっちりと掴んで押し開く。それだけで更に奥まで結合が深まって思わず声が上がった。掴んだ俺の腰をゆっくりと持ち上げては、少し乱暴に引き落とす。

「…ぁ、ぁ…あぅ…っ……ぅ…ぁ…ああ…っ…」

 グチュグチュと蒸れた肉の擦れあう音が、自分のものとも思えない淫らな声が、どこか遠くで聞こえる気がする。娼婦やAV女優なんて、男を喜ばせるために演技をしてるんだと思っていた。過去の自分も今まで付き合ってきた何人かの女性も、こんな風にあられもない声をあげることはなかった。いつも頭のどこかが醒めていた。それが。

「…あぁっ…あっ…あっ…あっ…ス、ネーク…スネー…ク…っ」

 全身が熔けてしまいそうに熱い。頭の中が焼ききれそうだ。俺は意識を手放してしまわないよう、祈るような気持ちで必死に彼の名を呼び続けた。頼むから、お願いだから彼を失ってしまうことのないように。このまま時が止まってしまうようにと。

 彼の上に跨っていたはずなのに、いつの間にか組み敷かれて身を折られていた。両脚を高く抱え上げられ、大きく拡げた格好。この体勢はみっともなくて恥ずかしいし、少し苦しいけれど、嫌いじゃない。

 より深く貫かれて、一つに繋がっていると実感できるから。

 抱いて抱きしめられて思うさま揺さぶられ、欲望に身の内を掻き乱される。淫らな水音。嬌声。熱い吐息。

「…っああ!ぁあ!……ぁ……ああぁあぁっ…!」

 身体の奥の一番深い所に、熱いものが叩きつけられる。深く重ねられた唇から送り込まれる唾液を飲み干しながら、俺はゆっくりと眠りの海に沈みこんでいった。

 

 

 

 

「…ん…うぅ~~~~ん……う~~~……」

 五、六時間は眠ってしまっただろうか。目は覚めたが、まだベッドから離れたくない。初めの頃と比べるとお互い加減が判ってきたのか(それとも慣れてしまったのか)起き上がれない、なんてことは少なくなったけれど。うーうー唸りながらベッドに懐いていると、後ろから呆れたような声がかかった。

「やっとお目覚めのようだな。ホントに前は不眠症だったのか? お前」

 寝返りを打って見ると、ドアのところでスネークがマグカップを片手に大袈裟にため息をついて、「やれやれ」と頭を左右に振っている。彼は何時でも何処でも眠れるし、即座に起きられる体質らしいが、俺はなかなかそうはいかない。「眠らない」のは割と平気だが、「ぱっと起きる」ってのが出来ないのだ。もちろん、危険な時には反射的に身体が動くが、そうでない時にはすぐには動けないし、動きたくもない。俺はわざと不機嫌な顔を作って応えた。

「……元気な誰かさんのおかげでね。今、何時?」

「もうすぐミルクの時間だ。オムツはさっき替えておいた。……飲むか?」

 手にしたアルミ製のマグカップを俺の前に差し出す。中身は俺の好きなカフェオレだ。スネークはブラック党なので、これは俺の為に淹れてきてくれたんだろう。受け取ろうとして身体を起こし、全身がさっぱりしているのに気づく。俺がくたばっている間に、身体も拭いておいてくれたらしい。

 自身の事にはちょっと不精だけれど、実は結構、世話焼きなのだ、この男は。せっかく作った不機嫌な表情が崩れて、自然と笑みが零れてしまう。

「何をニヤケてるんだ? 気持ちの悪い奴だな」

 言いながらベッドに腰掛けて、啄ばむだけのおはようのキス。そう、世話焼きの上に、触りたがりだ。元々俺は触るのも触られるのもあまり好きじゃなかったから(というより慣れていなかっただけかも)、最初は少し戸惑った。だが、じきに慣れてしまった。

 何より、スネークの熱は心地いい。

「いや、俺って結構、見る目があると思って。アンタって意外と『いい旦那』だよな。口は悪いし見た目はムサイけど、面倒見は良いし頼れるし。俺が女だったら、アンタの子供が生みたかったかも」

「ふん。俺に、子供は出来んさ。知ってるだろう」

 スネークが少し顔を顰めて、タバコに火をつける。彼にとって愉快な話題じゃないのは承知している。でもここ数日考えていたことを、きちんと話しておきたかった。

「それを言うなら俺だって、アンタに抱かれることは出来ても、アンタの子供は生んでやれない。でも、アンタとするようになって、セックスって性欲を処理したり、子供を作ったりするためだけのものじゃないってちょっと判ってきた気がする」

「……ストレートな表現しか出来んのか、お前は。ボキャブラリーが貧困すぎる。純文学でも読め」

「まぜっ返すなよ。真面目な話をしようとしてるんだ」

 ちょっと睨むと、ハイハイと首を竦めて先を促す。俺はマグカップを両手で包み込んで、立ち上る湯気を眺めながら言葉を捜した。

「……最近思うんだが……別にローズとヨリを戻したいとかじゃないから誤解するなよ? 最近は……ローズに感謝してる。たとえ命令だったとしても、俺の子供を生んでくれたから……もしかしたら本当に、俺のこと好きでいてくれたのかもしれない」

「……そうだな。そうかもしれん」

 ローズとの離婚は、先週、正式に成立した。幾つかの闇ルートを介して雇った弁護士を通じて、俺は彼女に離婚を申し立てた。俺の全財産(衣食住はずっと軍持ちだったし特に使い道がなかったから、預金は結構な額だった)を譲る代わりに、ジェシーの親権だけはこっちがもらう。それが今の俺に出来る精一杯。

 意外なほどあっさりと、彼女は離婚に応じてくれた。昨日、離婚届と一緒に送られてきた手紙には「あなたとジェシーの無事を、いつまでも祈っています」とだけ。丁寧で几帳面な文字で、短く綴られていた。

 彼女はどんな思いで、それを書いたのだろう。胸がずきりと痛んだ。

 それでも。

「でも俺は……多分『普通』が欲しかっただけなんだと思う。普通の恋人、普通の家庭、そういうものが。自分から彼女を抱いたことはなかったし、別に抱きたいとも思わなかった」

 あの頃はそんなこと、考えたこともなかったけれど。

 なんとなく口付けて、なんとなく夜を共にして、そんなものなんだろうと思っていた。それが『普通』なんだろうと。

「でも、アンタには……触れたいと思うし、触れられたいと思う」

 そこまで話して、手にしたカフェオレに口を付けた。猫舌の俺に合わせて、ちょっと冷まして砂糖は多め。彼のこんな小さな気遣いでも、嬉しいと、幸せだと感じてしまう。この感覚を知ってしまったら、もう、戻れない。「そんなものだ」と流されていたあの頃には。

 スネークは何も言わずに静かに噛み締めるような笑みを浮かべると、俺の髪をくしゃくしゃと掻き混ぜた。まるで子供にするみたいに。俺はちょっとムッとして、その手を軽くはたいた。我ながら起伏に乏しいと思っていた俺の感情を、この男はこうも簡単に引き出してしまう。

「……何か、おかしいか?」

「いいや。聞かせてもらえて光栄だ。今の話は全部、お前自身が感じて、考えた、お前自身の言葉だしな」

 満足そうに目を細めて、タバコの煙をゆっくりと吐き出す。それからそっと、俺の肩を抱き寄せた。今度はからかう声音で、こめかみにキスをする。

「……しかし今日は、随分とお喋りだな?」

「今日だけだ。ついでに言えば、アンタといると安心して眠れる。悪夢に魘されることもない」

「おいおい、俺は魔除けか何かか?」

「魔除けが気を悪くするんじゃないか?」

 目を閉じて頬に口付けを受けながら応えると、スネークは今度は声を立てて笑った。

「……お前は面白いな」

「褒めてるのか、それ?」

「もちろんだ。いつも少しずつ違う。見ていて飽きない。…………いつまでも見ていたい」

 顎を掬い上げられて深く口付けられる。彼のキスはタバコの匂いがして、ほろ苦いのに甘い。「お子様向け」と彼が言うカフェオレよりも、ずっと。

「……今日は『サービス』も良かったしな?」

「あんなの、いつでもしてやる。……アンタになら」

 俺は空いている片手で彼の硬い髪に指を差し入れて引き寄せ、今度は自分から口付けた。目を閉じてゆっくりと、舌を絡めあう。

 しっとりと響く小さな水音が、隣の部屋から聞こえてきた元気な泣き声に遮られる。お腹が空いてきたらしい。最近は泣き声で、ミルクなのかオムツなのか抱っこなのかが、俺達二人とも段々判るようになってきた。唇を離すと、スネークが大袈裟に溜息をつく。

「どうやら腹が減ったようだな、うちの王子様は」

「そのようだ。俺があやしてるから、ミルクを……」

「はいはい。他に何かご要望は?」

「朝飯の前にちゃんとヒゲ剃ってくれ。ちょっと痛い」

「……気が向いたらな」

 気のない返事でも、仏頂面をしながらその通りにしてくれるのは、いつものこと。 

 俺は何だか満ち足りた気分で、キッチンに向かう広い背中に抱きついた。

 

 

 


「雷電ったら昔は犯られまくり説(なんじゃそりゃ)」に基づき、「そやったら雷電がマグロではイカンやろ~」ということで書いてみました。フェラ&騎乗位のテクニシャンな新妻。スネーク、男としては気持ちイイながらもちょっとフクザツやろなあ。「……誰に仕込まれたんだ(……もしかしてソリダス!?)」って感じ。まさにアナ兄弟。でも昔のことに腹を立てるようなケツの穴の小さい真似もできんしな、包容力のあるオヤジとしては。ケツの穴が小さいのは受だけで結構。
(注:MY設定ではソリダスと雷電は犯ってません。士官クラス以上ならちゃんと女が調達されてると思うので、ソリダスが「綺麗なネーちゃんより可愛い男の子が好き」でない限り雷電に手は出してないはず。雷電のお相手はもっぱら女があてがってもらえない下級兵士達)。

しっかし、コレも時間掛かりました。えろ~な部分は1,2時間で書けたんですけどねぇ。それだけにしときゃよかったかも。どーせエロサイトだし~(笑)。終わった後の部分がちょっとどシリアスになっちゃって、うっかり別居しそうになり、あーでもないこーでもないとこねくり回して2週間。アホですな。

ところでウチの雷電、相変わらずアヘアヘうるさいですね。スネークのテクのおかげと思ってください(^^;)。まあ彼らは外人なので実際にうるさいと思いますけど、本当なら「Ooooh! Yes!」とか「Come!Come in!」とか「Aaaaaah, Goood!」とか言ってるのかも。そう思うとちょっとイヤ。洋モノAVの何がイヤって、あの喘ぎ声なのよね~。オゥオゥうるせえっての。呼吸も「シーハー、シーハー」って啜る感じだしさ。モデルのプロポーションとかはいいんだけど、アップにすると肌汚いし。逆に日本のAVはAV女優のアイドル扱いがイヤ。最近の子はみんなそこそこカワイイし、スタイルも良いんだけど、「ヌかせてナンボ」のプロ根性が感じられない。イメージビデオじゃねぇんだから、カワイコぶってないで、しっかり犯るコトやれよ!って感じ。森川いずみちゃんみたいな女優さん、また出てこないかな~(ここ10年、好みの子が出ません。残念)。小柄で貧乳・ロリ顔なのにSMだろうが2穴だろうがガンガン犯ってくれてて大好きでした。

 

 

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