■ Inside of the Locker ■

 

 引きずり込まれたロッカーの中。咄嗟の事に身構えたが「シッ! 俺だ」という聞き覚えのある囁きに安堵する。それと同時に、幾ら敵に追いかけられていた最中とはいえ、気配も感じずあっさりと引き込まれてしまった自分がちょっと情けない。我ながらかなりカンが働く方だと自惚れていたんだが。

 敵兵の足音が遠く近くで聞こえている。だが、このロッカーには特に注意を払っていないようだ。とりあえずホッと息をつくと、耳元に息が掛かるほどの近さに男の存在を感じて、頬に血が上った。狭い空間で後ろから抱えられたような体勢に、鼓動が早くなる。プリスキンと名乗った男に初めて会ったときから、俺は妙な既視感と違和感と……昂揚とを感じていた。

「……血の匂いがするな。どこをやられた?」

 換気用の隙間から外の様子を伺ったまま、腰に響く渋い声で囁く。言われてみると先ほど追いすがってくる敵の銃弾が掠めた部分が、急に熱を持って疼き始めた。

「右の太腿だ。大したことはない、掠っただけ……って、どこ触ってるんだ!?」

「デカイ声を出すな。……この辺りか?」

 温かい大きな掌が、右の太腿の真ん中辺りを前後に滑っていく。ぞくりと妙な感覚が湧き上がって、俺は焦った。

「ちょ…っ、大したことないと言ってるだろう!」

「止血しておかないと、床の血で敵に気付かれるだろうが。破傷風にでもなったら厄介だしな。どの辺だ?」

 場馴れした尤もな言い分に少々ばつの悪い思いで、出来るだけ動揺を出さないように応える。

「……もっと上だ。……ちがう、もう少し左……そうじゃなくて……」

 何だか太腿から尻の辺りを撫で回されているようで、胸がざわざわして落ち着かない。満員の地下鉄で痴漢に触られるのってこんな感じだろうか。今から思えば、止血用のキットをもらって自分で手当てすればよかったのだが。

 実は撃たれたのは右脚の付け根の少し内側で、太腿と言うより尻(というか股間)に近い。何でよりによってこんなところに当たるんだ、畜生。ローリングなんかするんじゃなかった。

 俺は半ばふてくされて、的外れな所を探っているプリスキンの手首を掴んで、そこに誘導した。

「……ここだ」

「ああ、わかった。もうちょっと脚を開け」

 恥ずかしいのでさっさと手当てを終えて欲しくて、俺は言われるままロッカーの幅一杯まで脚をにじらせた。傷の大きさを測るためだろう、無骨な指が触れるか触れないか位で、スカルスーツに出来た数センチの裂け目の周りをゆっくりとなぞっていく。狭く蒸れた空間の中に、小さく水音が響いた。

「随分、濡れてるな」

「…っ…!」

 脚の後ろの付け根の内側…といえば結局は尻の谷間の近くなワケで…じわり、と指で押し広げられ、耳元で吐息のように囁かれて、一瞬背筋を走った快感に俺はぎくりとした。

 もしかして俺、今、すごくマズイ状態なんじゃ……しかし逃げるにしてもまだ、すぐ近くに敵がうろついてるし……いや、このオヤジちょっと怪しいけどさっきも今も助けてくれたわけだし……でも、軍ってアレな奴、多いしな……いやいや、たまたま傷の場所がアレなだけで、他意はないよな、多分。

 パニクっている思考に、プリスキンが更に追い討ちをかける。

「下だけ脱げ」

 ぬ、脱ぐって!?

「かなり出血してる。ちゃんと手当てした方が良さそうだ。それに中に血が入ったままじゃ気が散る。戦場では一瞬でも判断が遅れたら命取りだからな。……ま、どうせ警戒が解けるまでは身動きが取れん。今の内に処置しておいた方が良いだろう」

 ううう、確かにそうだ。そうだとは思うけど……。ハズすぎる! 何でいいトシしたヤローが、オッサンにケツ見せにゃならんのだ!

「あ、いや、その………そう! これ、オールインワンだから、こんな狭いところじゃ脱げないんだ! とりあえず、上からバンドエイド貼っといてくれれば良いから!」

「? 用を足すときには? どうするんだ?」

 必死の言い訳も、プリスキンには通用しなかった。どうあっても今すぐ、手当てをする気のようだ。2回も命を助けてくれたんだし、このオヤジはいい奴に決まってるさ!……きっと……多分……。俺は深呼吸をして覚悟を決めた。

「………………股の所が、クロッチになってる」

「クロッチ? ふむ」

「ぉわぁ…っ!」

 聞くが早いか、プリスキンはぐいっと俺の股の間に手を突っ込み、止める間もあらばこそ、特殊マジックテープのクロッチをペリペリと剥がしてしまったのだ! 思わず声を上げて飛び上がった俺の拳が、ロッカーの壁に当たって「ゴン」と鈍い音を立てる。近くを巡回していた敵兵が「ピコーン!」とばかりに気付いたらしい。「音がした?」と言いながらこっちに近づいてくる。

 まずい。先に飛び出してM9で眠らせるべきか? でも麻酔が効く前に増援を呼ばれると厄介だし……。

 脚のホルスターに伸ばした俺の手と口を、プリスキンの大きな掌が素早く押さえつけた。そのまま俺を抱きかかえて、ズルズルと腰を下ろしていく。間一髪で、換気口から敵兵が中を覗いた。こっちからは向こうが見えるが、中は暗いので敵からはこっちが見えないようだ。

 そのまま息を殺して、敵が離れていくのを待つ。取っ手に手をかける音がしたのでビビったが、建てつけが悪かったらしくしばらくガチャガチャとやった後、ロッカーの扉をガン!と蹴飛ばして「気のせいか」と去っていった。足音が少しずつ遠ざかって、二人してふぅっと息をつく。

 と、途端に下半身剥き出し(ああ、パンツの線なんか気にせずにサポーターはいときゃ良かった!)で、後ろ抱きにプリスキンにのしかかっている自分の状態を思い出して、俺は慌てて膝を伸ばした。な、何か、あったかくて弾力性のある物が尻に当たっていた様な気がするけど……気のせいだよな……気のせいだということにしておこう、うん!

「……馬鹿者。気付かれたらどうする」

「〜〜〜〜〜〜〜すまない」

 でもでも、いきなりあんなことされたら、普通、誰でも驚くと思うが。せめて一言。うぅ〜。

「血を拭いて消毒する。沁みるかもしれんが今度は暴れるなよ」

「わ、わかった」

 クロッチをはずされて浮き上がった、臀部を覆っていた部分がぐいっと持ち上げられ、自然にロッカーの壁に上半身を預けて腰を突き出すような格好になる。多分、丸見え。クソッ、誰だよこのスーツ設計したのは。プロテクター以外はまるっきりエッチ用のボンデージじゃないか。暗くてロクに目が利かないのがせめてもの救いだ。

 ざらざらした感触(多分ガーゼ)が、膝裏から腿の間、尻の谷間へと這い上がってくる。傷口に当たると消毒液が沁みてカァッと熱くなった。皮膚の弱いところを狙ったように触れてくる指に何だか妙な感覚が湧き上がって、俺はビクビクと身を竦めた。

「ん? どうした?」

「……っ、なんでもない。さっさとやってくれ」

 喉の奥で笑うような気配に、必死に憮然とした声を作って応える。今度はぬるりとした冷たいジェルのようなものが患部を中心に塗り込められた。スースー、ヌルヌルして気持ちいいというか気持ち悪いと言うか。

「乾いたら皮膜のようになって患部を保護する。その後絆創膏を貼っておけば多少動き回っても大丈夫だろう」

「どの位で乾くんだ?」

「5分位だ」

「そんなにかかるのか……」

 ご、5分もこの情けない格好のままでガマンしなきゃいけないとは。トホホ。

 思わずあからさまにガッカリした声が出てしまい、耳元で低い笑い声が今度ははっきり聞こえた。むか。

「あんた、ほんとにSEALSなのか?」

「そう言ったろ? じゃなきゃ何だと思う?」

 喰ってかかったつもりが、逆にからかうような声音で問われて口篭ってしまう。何だろう。指示されることに慣れているから、推理は苦手だ。何も思い浮かばなくて、俺は溜息をついた。

「〜〜〜〜〜わからない」

「だろうな。大体、お前もコードネーム以外は言わないなんて明らかに怪しいぞ。適当な嘘でもついときゃいいんだ」

「……何だか、あんたの話も『適当な嘘だ』って言ってるみたいに聞こえるんだが」

「さあ、どうだかな。自分で考えろ」

 シ〜〜〜〜〜ン。

 弱った。今ので2、30秒くらいか。な、何か話してないと、情けなさが込み上げて来るんだが。なんか、背後に密着した男の気配とか、股間のスースーとかモロに意識してしまう。おろおろ。

「乾くまで小噺でも聞かせてやろうか?」

 俺の頭の中を見透かしたように、ククッと笑いながら囁く。くそう。明らかに面白がってやがるな、このオヤジ。

「……この状況で笑えるとはとても思えない」

 お笑い聞いて笑ってる場合じゃないし。

「それもそうだ。……じゃあ、もっと『イイ』時間潰しをしてやろう」

 ??? 何か今の「イイ」ってアヤしい響き……と思う間もなく、プリスキンの右手が前に回され、剥き出しになっている俺のモノをむんずと掴んだ。ヒィ。

「なななな、何を……!? は、離せ!」

「なんだ、もう勃ってるのか」

「ぅえぇ…!?」

 言われてみると確かにこの感じは…………ウソ!? 何でェ!?

「尻を触られて感じたか?」

「ち、ちが……うぅ〜〜〜! 離せ…よ…っ!」

 そのままゆるゆると扱きたててくる。狭くて逃げ場も無い。両手で力任せに引き離そうとするが、ビクともしない。バケモンか、このオヤジ!

「どうせこのままじゃ、このきついスーツは着れないぞ。すっきりさせてやる」

「余計なお世話……あン…っ」

 耳朶の後ろを軽く吸い上げられて、思わず声を上げて仰け反ってしまった。な、何だよ今の声は!?

「へえ。感度良いな、お前」

「…ちょ…っ…や…っ…」

 俺の反応に気を良くしたのか、チュッ、チュッと首や耳に唇が降りてくる。その度にゾクゾクして、身体から力が抜けてしまう。

 ううう、ウソだろ〜〜〜!?

「や、やめ……俺はノーマルだ…っ! 彼女だっている…ン…っ」

 必死に抗議しても全然堪えない。繰り出す手刀も肘打ちも、プリスキンは俺のモノを握ったまま、ホイホイと(こんなに狭いのに!)かわしてしまう。何者だよ、コイツ!?

「なんだ、そんなに美人なのに彼氏じゃないのか? まあいい」

 良くな〜〜〜い!!! …あ…っ…イイ………って、イカンイカン!! た、確かに上手いけど…っ!

 オタオタしているうちにもう片方の手が……後ろにっ、後ろにィ! 俺様ピ〜ンチ!!!

 何かヌルヌルした生温いクリームみたいなものが塗りつけられる。さっきのジェルは冷たかったからアレとは別物だな……とか考えてる場合じゃない!

「わわわ、な、何!?」

「何ってこの状況でやることといえばナニしかないだろう?」

「や、やめ……ぅわ…っ!」

 ごつい指がするりと谷間に入り込んできた。びっくりして身体を前に逃がすと、掴まれたままの前の方が痛い位にぎゅっと絞り上げられる。

「ひ…っ!」

「お前、軍にいるくせに初めてか? 力抜いてろ」

 自然に腰が引けてしまって、今度は押し当てられた指に自分から腰を突き出す格好になる。指があらぬ所に入りそうになって慌てて前に逃げると、また握りこまれる。後ろに逃げる。また刺さりそうになる。

「や…っ…い…っ…あ…っ…」

 何十回も繰り返しているうちに、段々頭の芯がぼぉっとしてきた。なんかもう、痛いコトされなくても勝手に腰が動いてしまう。クリームの助けを借りた指はいつの間にか少しずつ、俺の中に入り込んでしまっていた。

 クチュクチュと前と後ろから、いやらしい音がする。想像してたほど痛くない……っていうか、妙に気持ちイイ……なんてバラバラになりつつある頭のどこかでノンキに考えた。

「…は…っ…ふ……ふぁ……ぅン…っ…」

「ほら……気持ちいいんだろ?」

 耳を甘噛みされながら囁かれて、ガクンと腰が砕けそうになる。そうか。この声だ。吐息のように囁かれると、背筋が蕩けてしまいそうだ。畜生、音波攻撃なんて卑怯だぞ。俺は僅かに残った理性で必死に首を振った。

「ほう。じゃ、これはどうだ?」

「ぁはぁ…っ!」

 埋め込まれていた指が更に押し込まれ、俺の体の奥のある一点を突付く。途端に全身に電撃のような快感が迸った。

「……っあ! ……やぁ! ……ひ…っ!」

 そこを突き上げられる度に、いつもは射精寸前の一瞬だけ訪れる眩暈を伴う快感が、繰り返し繰り返し襲ってくる。でも前の方は根元をぎっちりと押えつけられていて、達することが出来ない。切ない。

 もう俺はされるがままに、喘ぐことしか出来なかった。ゆっくり指が増やされて、圧迫感が強まる。チリッと痛みが走ったが、すぐに2本の指が交互に休み無くアノ部分をグイグイと突き上げてきて、苦痛が快楽に摩り替わってしまった。

「…いっ…ぁあ! …ぁあ! …やめ…っ…うン……っ」

「やめてもいいのか?」

 気持ち良過ぎて辛い。苦しい。泣きそう。もうワケが判らない。とにかくイキたい。イキたい。

「…も…っ…ぁあ……く、るし…ぃ…っ」

 どうしていいか判らなくなって、自分を辱めている男の肩に顔を押し付けて懇願した。頬に擦れる無精ヒゲの感触すら、性感を刺激してしまう。俺、もう、泣いてるのかもしれない。

「ちょっと待ってろ」

「あぅ…ンン…っ」

 プリスキンは俺のこめかみに軽くキスをすると、中をめちゃくちゃに掻き回していた指をあっさりと抜き出してしまった。快感が去ると、切なさで一杯になる。思わず非難めいた声が零れ、俺は無意識に腰をくねらせていた。

「そんな恨めしそうな声を出すな。もっと良くしてやる」

「…っぁあ!? …ぅあぁぁあぁ…ッ!!」

 指とは違う太くて熱いものが濡れそぼったそこに押し付けられ、ギチギチと肉を軋ませてめり込んでくる。

「…ふぁ! …あぁあ! …あィィィ…っ!」

 腰骨が両手で掴まれて反動を付けて引き寄せられ、その度にズズッと音を立てて熱い塊が奥へ奥へと分け入って来る。強烈な圧迫感に、息が出来ない。

 何度か打ち付けられて根元まで完全に収まったところで、プリスキンは一旦動きを止めた。そうされると余計に、体内にみっちりと埋め込まれている男のモノの存在を感じる。不自然な所を押し拡げられている痛みと満腹感にも似た充足感に、吐息のような喘ぎが漏れた。

「…っあ、はぁ……あああ…ぁ……」

 ああ。

 アレが、あんな所に入っちまったんだ、と纏まらない頭の中でぼんやり思った。信じられないけれど、それは俺の体の中で物凄い存在感を主張している。目で見たわけでもないのに浮き出た血管までイメージ出来てしまいそうだ。不思議と嫌悪感は無い。俺、バカになってしまったのかもしれない。

 俺が息をつくのを待っていたかのように、掴まれた腰が今度はゆるゆると揺り動かされる。その度に指なんかとは比べ物にならない圧力で体の奥のあのいやらしい部分がゆっくりと強く揉み立てられて、狭い肉を抉じ開けられている苦痛よりも全身が震えるような快感に押し流された。 

「…い…っ、あぁ…やぁぁ……く…ふぅ…っ…ぅ…」

 どうしよう。

 どうしよう。

 変だ。

 何だよ、コレ。

 頭はクラクラして、尻はヒリヒリして、イかせてもらえないアレはズキズキして、どこもかしこもツライのに、押し上げられている体の奥から快感が溢れて止まらない。

「よくなってきたようだな?」

「…あ、ん…っ…ダ、メ…ぇ…あぁ…イ、イ…ぅん…っ」

「どっちなんだ」

 喉の奥で笑う振動にさえ、感じてしまう。段々と抽送が激しくなって、「もうダメだ」と思った瞬間、今度はゆっくりと俺の中を掻き回す。その度、もうこれ以上はないと思うのに、更に深みへと引きずり込まれる。

「…ぁはっ!…はっ!…あぁあ……はぁ!…あぁ!…やぁあぁ……」

 満ちる。

 溢れる。

 はじける。

 突き上げられるたび、腹の中で自分の精子が爆ぜ回っている気がする。

「待たせたな。イッていいぞ」

 永遠に続くかと思われた快楽の波の中で、不意に締め付けられたままトロトロと蜜を溢れさせていた先端にぐりっと爪が立てられ、同時に押し潰されるかと思うような圧力でアノ場所が押し上げられた。

「…ひ…っあ!……ぃあああぁああぁああぁッ…!!」

 溜まりに溜まったものが一気に溢れ出す。今までに感じたことのないほど激しい開放の悦び。自分の中に熱いものが注ぎ込まれるのを感じながら、俺は崩れるようにゆっくりと意識を手放していった。

 

 

 深く、静かな口付け。熱い舌がゆっくりと絡められ、痛いほど吸い上げられる。タバコの匂いのする唇はほろ苦いのに、何故かローズよりも甘い気がした。

「……悪いな。本気になりそうだ……」

 

 

『……ック! ジャック!』

 …ったく、うるさいな。人が久しぶりに気持ちよく寝てるのに。耳の奥で聞こえる金切り声に、無理やり覚醒させられる。

『ジャック! 返事をして、ジャック!』

「…あ、あ……ローズか……」

 俺は一人ロッカーの中で、膝を抱えるようにして眠りこけていたらしい。プリスキンは、いつの間にかいなくなっていた。眠りの浅い俺に気づかせないなんて、つくづく気配を消すのが上手いオヤジだ。隠密行動に向いてるなぁ。

『よかった、気がついたのね! 何があったの?』

「何がって……」

 記憶のほんの浅い所にあったさっきまでの出来事が強烈にフラッシュバックして、全身に火が点いたみたいに熱くなった。

 そうだ。俺、アイツに犯られちまったんだっけ。なんか……凄かった。セックスで気を失ったのなんて初めてだ。

 不思議と怒りが湧いてこないのは、あのキスのせいだろうか。それともあの言葉?

『あなたがそのエリアに入ってから、通信妨害を受けて今までモニターできなかったの。敵に追いかけられていたところだったし、心配してたのよ』

 通信妨害? ……ということは、ローズや大佐達は俺がアイツに何をされたか知らないってことか。ほっとすると同時に、もしかして、それもアイツがやっていたのかも知れないと思った。装置がここにあるならまだ妨害を受けているはずだし。あの抜け目の無いオヤジなら、あり得る。

『ジャック? 一体、何があったの?』

「あ、いや……何でもない。ちょっと怪我をして……気を失ってただけだ」

 作戦行動中のこととはいえ、ロッカーの中でレイプされてた、なんて報告する必要は無いだろう。怪我してたのも、気を失ってたのも事実だし。思い出して傷口を手で探ると、丁寧に処置がなされていた。ついでに元通りにクロッチで留められた前も、後ろも……妙にさっぱりしている。多分、消毒綿で綺麗にしたのだろう、微かにアルコール臭がする。

『怪我してるの? どこ? 平気なの?』

「ああ。もう平気だ。処置も済ませた。……任務を続行する」

 根掘り葉掘り訊かれそうで面倒くさくなってきて、俺は一方的に無線を切った。でもモニターは再開されてるようだから、もう一眠りってワケにもいかない。仕方なく立ち上がると、何だか尾てい骨が抜かれてしまったような変なカンジがする。もしかしてついさっきまで、俺は「腰が抜け」ていたのかもしれない。

 はあ。カッコ悪い。

 溜息をつきながら換気口から周囲の様子を探ってみる。周囲には何の気配も感じられない。

 俺は意を決してロッカーの扉を開けた。一瞬、光に目が眩み、それから奇妙な違和感を感じる。

 ……自分の体がない!?

 慌てて肩や脚を触ってみると、確かに手応えはある。胸のあたりにショルダーホルスターらしきものが付けられていて、パームサイズの機械のようなものが入っていた。手探りでスイッチとおぼしき物を切り替えると、見慣れた自分の体が姿を現す。

「……ステルス迷彩?…」

 くたばってる俺が敵に見つからないように、わざわざ装備させてくれたらしい。よくこんなもの持ってたな。これはかなり心強いかも。

 ふとロッカーに目を戻すと、隅の方にちょうど携帯できる位の量のレーションや救急キットや弾薬が積んであった。これも「使え」ってことなんだろう。一見不精そうだし、人のこと小馬鹿にしてると思ったけど、割と優しいんだな。ポケットに弾薬やら何やらを詰め込みながら、自然に頬が緩んだ。

 ……待てよ。それとも……

 ふと思いついたもう一つの解釈に愕然とする。…………これって、もしかして、「アレ」の代金!?

 俺は散々迷ってから、プリスキンに無線を入れてみた。

 …………出ない。出られても、何を話していいか判らなくて困るけど。

 コール音だけが空しく響く。しかし、少しも不安は無かった。きっと何かで手が離せないか、出る気が無いかのどっちかだ。あの図々しいオヤジが殺られるなんて、これっぽっちも考えられない。

 多分、またすぐに会えるだろう。そんな予感がする。

 次に会ったら絶対に、とっちめてやるからな。

 まずはお仕事、お仕事。何だか少し楽しい気分で、俺は通路に足を踏み出した。

 

 

 


わ〜い、初のプリ雷です♪\(^^)/

書いてる途中でモニターがピンク一色になってしまった、イワクつきのピンク小説。初物ノーマル雷電が中年スケベのプリ中においしく頂かれちゃいました。プリ中といえば場所はロッカーしかありませんよね! さすがに男2人が入れるダンボールでは怪しすぎます(笑)耐久性の問題もあるし。 「いつやねん!」とか「どこのロッカーやねん!」というツッコミは不可。ギャグなんだから、カタイこと言いっこなしよん。

「スカルスーツは股部クロッチ」も私の妄想ですので本気にしないように……ってそんな人いないか(^^;) しかしウチの雷電、ローズに愛がないのがありありですな。当然ながら。

 

 

− 《おまけ》 その頃のプリ中さん −

「……スネーク。通信妨害なんかして、一体何をやってたんだい?」

「あ、ああ、例の若いのが追いかけられて怪我してたんで、助けて手当てしてやったんだ」

「それだけ? どうして通信妨害装置が必要なワケ?」

「いや、怪我をした場所がちょっと……人には見せられない所だったんで、可哀想でな」

「へぇぇ、そう。ならいいけど。……何だかすごく、可愛い子らしいね? 女の子みたいで、特殊部隊には見えないんだって?」

「そうだな、女でも通るな、アレは。サラサラのプラチナブロンドにでかくて蒼い瞳、長い睫に小さくて柔らかい赤い唇。何より尻の形がいい。触り心地もすべすべして……」

「…………スネーク。男相手でも、レイプは立派な犯罪だよ?……」

「ち、違う! 途中からは合意だったぞ、アレは! かなりヨガってたし!」

「……『途中からは』ってことは最初は無理矢理ってことじゃないか。法廷でそんな言い訳が通ると思うかい? 君が捕まっても僕は身元引受人にはならないからね。最低だ、君って男は!」

ブチッ! ツー…ツー…

「ま、待て! オタコン! オタコ〜ン!!」

 

ちょっとプリオタですか?

 

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